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サントリー、レンゴーなど12社/プラの再資源化技術で新会社を設立


 去る6月30日、サントリーホールディングスやレンゴーなど、12社が共同出資した新会社「㈱アールプラスジャパン」設立の記者発表会が開会された。新型コロナウイルス感染症拡大の防止から、発表会はオンラインストリーミングによる配信となった。海洋プラスチック問題への対応が世界的な緊急課題として取り上げられる中、プラスチック再資源化技術による問題解決に貢献するため、今般、業界の垣根を超えて新会社が誕生した。

 共同出資企業は、サントリーホールディングス/サントリーMONOZUKURIエキスパートほか、東洋紡、レンゴー、東洋製罐グループホールディングス、J&T環境、アサヒグループホールディングス、岩谷産業、大日本印刷、凸版印刷、フジシール、北海製罐、吉野工業所(順不同)の12社(6月30日時点)。このほか、住友化学など複数の企業が出資を検討しているという。

 冒頭の挨拶では、新浪剛史サントリーホールディングス代取社長が登壇。「世界的な課題となっている海洋プラスチック問題を、日本のテクノロジーという切り口で解決すべく、異業種や同業種合わせて12社が集い新会社アールプラスジャパンを設立した。使用済みプラの再生利用という共通課題を認識し、新技術となるケミカルリサイクルの応用により、具体的なアクションを起こしていく」と抱負を語った。

 続いて、新会社の社長に就任した横井恒彦サントリーMONOZUKURIエキスパート執行役員から、新会社の概要説明があった。プラスチック課題に対する取組みの中で、米国アネロテック社の、ウッドチップからPETの材料となるキシレンを生成する「Bio T-CAT」技術に着目。

 さらに使用済みプラスチックを再生する「Plas T-CAT」技術を用い、サーマルリカバリー(熱回収)量の低減や、プラスチック最終製品のロスを少なくすることを目指す。また、この新技術では油化工程を省略できるので、省エネルギー化-CO2排出量の低減につながるという。

 引き続き出資会社を代表して、東洋紡の楢原誠慈代取社長、レンゴーの大坪清代取会長がそれぞれ登壇。レンゴーの大坪会長は今回の共同出資参入について、次のようにコメントした。
 「今般、アールプラスジャパン設立のお話をいただき、絶対に協力するよう担当者に指示を出した。なぜかというと、企業経営にとって今、最も重要なことはESG(環境:Environment、社会:Social、ガバナンス:Governance)を絶対に履行することにあるからだ。そこでは特に資源のリサイクル、そしてリユースが重要になるわけで、そのためにも環境を考えていかないといけない。段ボール一筋だったレンゴーも、現在では、製紙、グラビア印刷、フィルム研究などさまざまな分野に事業領域を広げている。その中の一つであるセロファン製造は、今回のアネロテック社の技術開発や新会社のアールプラスジャパンに、何らかの形で利用できるのではないか、という淡い期待も抱いている。新会社はプラスチックのリサイクル、それもケミカルリサイクルという方向を追求する趣旨であり、サーマルリカバリーではないことから、本当の意味のESGを完成させる一端になればよいと思っている」

 また、アネロテック社・David Sudolsky社長からのビデオメッセージでは、「当社は石油由来ではなく、非食用バイオマスからさまざまな基礎化学品を生成する技術を開発する会社として、2008年にニューヨークで創業した。2012年にサントリーが当社のBio- T-CAT技術に可能性を見出し、当社とのコラボレーションを開始。このたび当社のチームが類似したPlas T-CATという技術を用いて、さまざまな使用済みプラスチックを効率的かつ環境負荷が少ない工程で、エチレンやプロピレンなどバージンプラスチックの生成に必要な素材を抽出する技術に取り組んだ。経験豊富な当社の技術陣と経営陣、そして高度に自動化されたラボや先進的な大規模パイロットプラントにより、この技術の進展と商業化を目指していきたい」と語った。

 アールプラスジャパンの横川社長は、今後のビジネスモデルとして、アネロテック社の技術を用い、新会社でプラントを建設して商業化を図り、ライセンスを出資企業に提供すると説明。例えばレンゴーの場合、ライセンスを受けて容器包装の工程で参画することになる。新事業の実用化は、2027年を予定。

 

(FUTURE2020年7月20日号)

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