業界ニュース

日本紙パルプ商事/「日本橋日銀通りビル」竣工
 日本紙パルプ商事(略称・JP)ではこのほど、旧本社跡地で開発を進めてきたオフィスビル「日本橋日銀通りビル」が完成した。
 同ビルは、免震構造による“安心安全設計”を採用した、地上8階建ての賃貸用オフィスビル。徒歩5分以内にJR神田駅・新日本橋駅、地下鉄三越前駅の3駅があり、東京駅や羽田・成田への交通アクセスも至便。1階は店舗スペース、2〜8階は約320坪の無柱賃貸用オフィスゾーンとなっている。LED照明や屋上太陽光発電を採用したほか、明るさセンサー・人感センサーで不在箇所を消灯・減灯する自動制御も実現、また24時間対応の個別空調を用いるなど、ワーカーにとっての快適性も追求している。
 〔建物概要〕
 所在地;東京都中央区日本橋本石町4-6-7
 面 積;敷地面積1,551.39m2、延床面積1万164.21m2
 階 数;地上8階・塔屋1階
 構 造;免震構造RC造(一部SRC造・鉄骨造)

 複合書店事業に参入

 またJPはこのほど新会社を設立し、複合書店経営事業に参入することを決めた。2015年春の一号店出店を目指す。本と雑貨を同じ棚に陳列したり、購入前の本をカフェスペースで軽食とともに試読できたりといった新しい書店スタイルを導入し、来店者が本をじっくり選べる空間を提供していく。またカフェスペースでは、サイン会やトークショウなどのイベント会場としての貸し出しも予定している。
 JPは、「このような場の提供を通じて紙メディアの新しい可能性を追求するとともに、一般消費者のニーズを把握することで、洋紙の販売事業との相乗効果に繋げていきたい」と述べている。
 〔新会社の概要〕
 名 称;潟梶[ディングポートJP
 所在地;東京都中央区勝どき3-12-1(フォアフロントタワー)
 代表者;宮崎友幸代表取締役社長
 資本金;3,000万円(JP100%出資)

(Future 2014年9月22日号)

日本製紙/新形状・屋根型紙パックが四国乳業「濃厚4.5」に採用
 日本製紙の屋根型紙パック“NP−PAK+R(エヌピーパック プラスアール)”が、四国乳業がリニューアル発売する“濃厚4.5”(900ml・420ml)に採用されることとなった。8月29日から製造を開始し、順次店頭販売される。国内で初めて新形状の屋根型紙パックが市場に流通することになる。
 “NP−PAK+R”は、従来の屋根型紙パックの使いやすさはそのままに、屋根部の形状に曲線を組み込んだ紙パック。独自の形状による高いアイキャッチ性、ユニークな非対称形状により「あけくち」側が分かりやすいことが特長となっている。また、補助罫線を入れて急須のように丸みを帯びた注ぎ口にし、飲料を注ぎやすくしてある点も特長の一つ。

(Future 2014年9月22日号)

特種東海製紙/嵩高FP“風光”を新発売
 特種東海製紙はこのほど、さわやかな白さと温かい肌触りを持ち、しっとりとした柔らかさが特徴の嵩高ファンシーペーパー“風光”を発売した。格調高い“波光”の姉妹品として、軽く、しなやかに、スムースに仕上げた新製品。四六判(Y目)、連量は70・90・110・135・200kg、全1色。

(Future 2014年9月15日号)

紙・板紙需給1〜6月期/出荷は2年連続増も先行きは不透明
 日本製紙連合会はこのほど、1〜6月期の紙・板紙需給を集計したが(6月分は速報ベース)、消費税率引き上げの影響から、予想されたこととはいえ1〜3月期と4〜6月期とでは極めて対照的な実績となっている。すなわち、1〜3月期のメーカー国内出荷が前年同期比ベースで紙=+4.4%、板紙=+8.0%、合計=+5.9%(650.5万t)だったのに対し、4〜6月期はそれぞれ△3.8%、△0.5%、△2.4%(616.1万t)とマイナスに転じている。
 一方、1〜6月期の通関輸入(6月は製紙連による推計)は紙が+17.6%、板紙が△10.5%、合計=+9.5%(113.7万t)と、主力の紙(とりわけ塗工印刷用紙)で増勢が目立つ。日銀の金融緩和政策で円安が続いているにもかかわらず、特定品種においては為替の動向などに左右されない形で、輸入が定着していることを物語っている。この点を対内需比率として具体的に見ると、塗工印刷用紙で14%、情報用紙で29%(ほとんどがPPC用紙)、白板紙で23%(ミルクカートン用紙を含む)となる。
 以上のメーカー国内出荷+輸入通関に、流通在庫増減の影響を加味した1〜6月期の内需見込量は紙が+1.1%、板紙が+2.8%、合計で+1.8%(1、375.1万t)の実績見込み。製紙連が年初に試算した2014年の通年予想はそれぞれ△1.3%、+0.1%、△0.7%なので今のところ上振れしているが、消費増税に伴う反動減がどこまで続くかなど今後の不透明要因は多い。
 その一方で輸入チップの価格は円安の影響から高止まりしており、古紙も内外のマシン新増設や新聞・雑誌の発生減を背景に需給がタイト化しつつある。したがって国内メーカーが進むべき航路の幅は限られており、引き続き慎重な舵取りが求められていると言えるだろう。この点について製紙連は次のように現状を分析している(以下、特記しない限り「%」は対前年増減率)。

 〔概 況〕
 1〜6月期の紙・板紙需給は、生産が+3.6%の1、335.8万t、出荷は+1.9%の1、317.2万t(うち国内向けは+1.7%の1、266.6万t、メーカー輸出は+8.1%の50.6万t)と、生産は4年ぶり、出荷は2年連続で前年同期を上回ったが、消費税率が引き上げられた4月以降に限れば、生産は横ばいも出荷は前年を下回っている(4〜6月期;生産+0.5%、出荷△2.2%)。
 在庫は消費税率引き上げ前の駆込み需要等により、3月末にはリーマン・ショック以降で最低(の在庫率)を記録したが、4月から増加に転じ、6月末には前年を上回る水準となった。価格(日銀企業物価指数)は、消費税率引き上げの影響で4月に上昇したが、それ以降は横ばい。消費税の影響を除くと、一部品種を除いて変動はなかった。
 なお消費税率の引き上げの影響については、品種による濃淡はあったものの、全体としては前回(1997年)に比べ駆込み需要などが大きく出た分(増加幅)、反動(減少幅)も大きかった。
 消費税率が引き上げられて3ヵ月余が経過し、反動減の影響は徐々に薄れつつあるが、足許の需給状況を見ると、グラフィック用紙や衛生用紙分野では下げ止まりの兆し、板紙・包装分野でも持ち直しの兆しが出てきた程度にとどまっている。
 今後、景気の緩やかな回復に伴い需給は上向いてくるものと予想されるところだが、これまでの価格修正の影響や、他媒体・他素材へのシフト、構造的要因の影響など、需給環境には不透明な部分が数多く残されており、予断を許さない状況が続くものと見られる。需要動向には細心の注意を払い、需給バランス維持に向けた取組みが必要である。

 〔紙〕
 (1) 概 況
 1〜6月期の紙需給は、生産が+2.6%の772.8万t、出荷が+0.3%の761.4万tとなった。出荷のうち国内向けは+0.3%と微増、輸出はほぼ前年並み(+0.0%)だった。国内出荷は、1〜3月期が消費増税前の駆込み需要により+4.4%を記録していたが、増税後の4〜6月期は△3.8%と減少した。在庫は6月末時点で136.7万tとなり、前年12月末の125.4万tに対して+11.3万tの増加。1〜3月期は減少した(△4.0万t)ものの、4〜6月期に大きく増加(+15.3万t)し前年を上回った。
 (2) 主要品種別国内出荷
・新聞用紙
 △0.6%。サッカーFIFA ワールドカップの開催などにより頁数は堅調で、前年に比べ朝刊の発行日数が1日多かったことも需要の押し上げ要因となったが、全体としては発行部数の減少による影響の方が大きかった。
・印刷・情報用紙
△0.3%。1〜3月期が+4.2%だったのに対し、4〜6月期は△4.8%と落ち込んでいる。品種別では、非塗工印刷用紙が△3.1%で、特に上級印刷紙が△4.6%と不振だった。塗工印刷用紙は合計で△0.7%だったが、微塗工紙の△6.8%に対し、軽量コート紙は△0.3%とほぼ前年並み、上質コート紙は△2.8%となっており、品種間で明暗が分かれている(ただし、上質コート紙も4〜6月期は△1.4%と前年割れ)。情報用紙は+5.5%。主力のPPC用紙が+7.4%(1〜3月期に限れば+13.1%)となったほか、複写原紙が+4.4%、情報記録紙が+2.6%、フォーム用紙が+1.0%と、主要品種が軒並み前年を上回っている。
・包装用紙
+3.5%となった。1〜3月期(+5.1%)、4〜6月期(+1.9%)とも前年水準を上回っている。品種別でも、未晒包装紙(+3.5%)、晒包装紙(+3.5%)がともに増加した。
・衛生用紙は+1.5%。ただし消費増税の影響は顕著に出ており、1〜3月期が+9.6%を記録したのに対し、4〜6月期は△6.1%と大きく落ち込んでいる。
 (3) 輸出入動向
 メーカー輸出はほぼ前年並みの38.5万tだった。仕向地別では、大洋州向けが+2.5%と増加したものの、全体の8割を占めるアジア向けが△1.4%にとどまった。品種別に見ると、印刷・情報用紙は国内向けが優先されたことなどから減少(△8.0%)、特に塗工印刷用紙は△10.4%とマイナス幅が大きい。一方、新聞用紙は前年の水準が極めて低かったこともあって大幅増(+78.9%)、包装用紙も前年を上回っている(+19.0%)。
 輸入通関(1〜5月期)は+15.9%の65.1万tとなり、輸入比率は前年同期の8.5%から9.6%に上昇した。品種別に見ると、塗工印刷用紙は前年水準が低かったこともあって+43.8%の30.9万tと大幅増。最大の輸入先である中国(△0.5%の10.8万t)は微減となったものの、ドイツ(+197.7%の5.6万t)、フィンランド(+129.6%の5.0万t)、スウェーデン(+42.0%の4.1万t)など、欧州からの増加が顕著だ。
 一方、PPC用紙(上質紙系カット紙)の輸入は△1.9%の23.1万tと前年割れ。これは、インドネシア品が△13.0%の15.1万tと大きく減少したことによるものだが、逆に中国品については+38.9%の7.6万tと大幅に増加している。
 印刷・情報用紙以外では、衛生用紙(原紙のみだと+15.8%の0.6万t、加工品や最終製品も含めると+52.9%の8.2万t)の増加も注目される。その輸入先では中国が最も多く(加工品込みで65.2%のシェア)、そのほかにインドネシアなどとなっている。

 〔板 紙〕
 (1) 概 況
 1〜6月期の板紙需給は生産が+4.9%の563.1万t、出荷が+4.2%の555.8万t(うち国内向けは+3.6%の543.6万t、輸出は+45.0%の12.2万t)で、生販ともに前年を大きく上回った。
 消費増税前の駆込み需要が主因だが、増税後(4〜6月期)もユーザーの在庫補充や新製品投入などにより、反動減が相殺されたことも影響している。在庫は6月末時点で63.1万tとなり、前年12月末に対して7.3万tの増加。前年同月は下回っているが、5月以降ほぼ前年並みで推移している。
 (2) 主要品種別国内出荷
・段ボール原紙
 +3.8%と、消費増税前の駆込み需要が寄与して3年ぶりに前年を上回った。増税後の4〜6月期はその反動が懸念されたが、前倒し需要の受注残や在庫補充により、また新製品投入やキャンペーンの実施といったエンドユーザーの需要喚起策もあって△0.7%の微減にとどまった。
 需要分野別(段ボールシートの製箱投入量=1〜5月期)で見ると、全体の4割強を占める加工食品向けは+3.8%。増税前にはミネラルウォーターなどを中心に買いだめが活発化し大きく増加、増税後もユーザーの在庫補充や堅調な食品需要に支えられたことから、前年を上回った。1割強を占める青果物向けは+1.6%増。増税前には駆込み需要で1割超の増加となったものの、増税後は反動減が続き小幅の伸びにとどまった。電気・機械器具向けは+5.3%。増税前は白物家電などを中心に増加、増税後も駆込み需要の受注残や新製品投入などが需要の下支えとなり、前年を大きく上回った。
・紙器用板紙
 +1.7%。増税前にはティシュなどの日用品を中心に仮需が見られ、増税後もユーザーの在庫補充により、また商品のリニューアルやキャンペーンの実施といった販促強化もあり、3年ぶりに前年を上回った。
 主力のコート白ボールは+2.6%。菓子やレトルトなどの食品分野で増加し、ジェネリック医薬品も堅調に推移、またティシュやラップなどの日用品向けで需要が伸びたことから前年を上回った。同様に特殊板紙(+0.9%)も、菓子やコンビニなどの食品向けが堅調で、医薬向けも増加したことから、前年を上回った。商業印刷向けが主体の高級板紙は△0.4%。店頭販促品のPOPは堅調も、出版・書籍向けやトレーディングカードの減少で前年を下回った。
 (3) 輸出入動向
 メーカー輸出は円安と海外関連企業への輸出増などから、+45.0%の12.2万tと前年を大きく上回った。品種別に見ると、段ボール原紙は+58.2%。うちライナーは+59.8%、中芯原紙は+57.1%と、ともに数量を伸ばした。輸出先ではアジアを中心にマレーシア、ベトナム向けが堅調、タイ向けは数量を拡大した。対照的に白板紙は△24.1%と、最大の輸出先である香港向けの減少から前年を下回っている。

(Future 2014年8月11日号)

紙・板紙需給6月/国内出荷が3ヵ月連続で減少
 日本製紙連合会が集計した6月の紙・板紙国内出荷は、前年同月比△1.1%と、3ヵ月連続で減少した。うち紙は△2.5%の113.0万tで3ヵ月連続の減少、一方板紙は+0.8%の89.7万tと3ヵ月ぶりに増加した。消費増税に備えた駆け込み需要の反動減の影響は板紙・包装分野を中心に薄らいだが、グラフィック、衛生分野の需要は停滞している。
 紙・板紙の輸出は前年同月比△0.3%の8.4万tで、ほぼ横ばいながら前月に続き減少した。うち紙は△9.1%の5.8万tで、東南アジア向けの減少により3ヵ月連続の減少。一方板紙は+28.1%の2.6万tと、東南アジア向けを中心に20ヵ月連続増。
 紙・板紙の月末在庫は前月比+3.1万tの199.8万tで、3ヵ月連続の増加。うち紙は+0.7万tの136.7万tで、衛生用紙の増加により3ヵ月連続増。板紙は+2.4万tの63.1万tで、段ボール原紙を中心に2ヵ月連続の増加。
 以下は主要品種の動向である。
 〔新聞用紙〕
 国内出荷は前年同月比△0.6%減の25.8万tと、小幅ながら4ヵ月連続の減少。W杯関連などによる増頁はあったが、発行部数の減少が響いた。
 〔印刷・情報用紙〕
 国内出荷は前年同月比△3.9%の61.2万tで、3ヵ月連続の減少。商業印刷向けなどを中心に印刷用紙は低調だが、情報用紙はPPCを中心に2ヵ月連続で増加している。メーカー輸出は△17.4%の4.1万tと、前月に続き2割弱の減少となった。
 〔包装用紙〕
 国内出荷は前年同月比+2.5%の6.3万t。駆け込み需要の反動減の影響は残るが、未ざらしを中心に前月の減少から増加に転じた。メーカー輸出は+8.8%の1.1万tで、引き続き高水準。
 〔衛生用紙〕
 国内出荷は前年同月比△5.0%の13.3万t。トイレットペーパー、ティシュを中心に駆け込み需要の反動減に加え、製品輸入の増加などもあり、3ヵ月連続の減少。
 〔板 紙〕
 段ボール原紙の国内出荷は前年同月比+1.0%の71.6万tで、加工食品向けなどを中心に3ヵ月ぶりの増加。白板紙の国内出荷も+0.2%の11.5万tで、わずかながら前月の減少から増加に転じた。荷動きは低調だが、POP、加工食品向けなどが寄与。

(Future 2014年8月11日号)

レンゴー/段原紙の減産体制を強化
 レンゴーはこのほど、段ボール原紙(中しん)の減産体制について発表した。同社では、主要銘柄である中しん原紙の在庫が適正水準を上回るため6月から減産を強化。7月は需要状況によってさらに5,000tの追加減産を実施し、8月以降も在庫水準を見ながら減産を継続する予定。
<中しん原紙の減産量>
・6月実績:生産能力比△2.5万t(△25%)、前年実績比△1.3万t(△15%)
・7月計画:生産能力比△3.1万t(△30%)、前年実績比△1.9万t(△20%)

(Future 2014年8月4日号)

大王製紙/中国とタイでベビー用紙おむつの生産設備を増強
 大王製紙の連結子会社、大王(南通)生活用品有限公司(本社:中国江蘇省南通市。略称:EICN)は、ベビー用紙おむつの生産設備を増設する。2015年8月に営業運転開始の予定。併せて、同年10月完成に向けて資材保管倉庫も建設する。
 中国のベビー用紙おむつは、年率約115%で需要が拡大している成長市場。EICNは大王製紙グループの生産・販売会社として2012年12月に設立され、13年11月からベビー用紙おむつ『GOO.N(グ〜ン)』の生産を開始。その後順調に販売量を伸ばし、今年8月1日にも生産ラインを増設している。
 EICNは“高品質な紙おむつ”を求める中国ユーザーをターゲットに拡販を進め、『GOO.N(グ〜ン)』ブランドは着実に支持を拡大してきた。今後も引き続き販売伸長が見込めるため、生産設備の増強と倉庫拡張、および同社工場の隣接区画(3万833u)の取得を決定したもの。設備増強により、同社の生産能力は現在の1.5倍になる。また隣接地取得後の工場用地は計8万3,833uとなる。概算投資総額は41億円。
 大王製紙はこのほか、タイでも連結子会社エリエールインターナショナルタイランドのベビー用紙おむつ生産設備を増強する。現地の需要構造の変化と販売量の伸長に合わせて生産ラインを増設するもの。今年9月から営業運転を開始する。これにより同社の生産能力は現状の1.3倍になる。

(Future 2014年9月8日号)

大王製紙グループ/女性管理職比率30%を目指す
 大王製紙グループはこのほど、「ダイバーシティ経営による組織の活性化」を重要な経営戦略の一つ として位置付け、取組みを強化することを発表した。
 まず、女性パワーを経営に活かす取組みを進展させ、多様な視点でビジネススタイルや働き方の変革につなげていく。将来的には、経営の意思決定の場に参画できる女性社員の輩出を期待し、施策を講じながら全社をあげて支援する。
 具体的には今年4月、人事部に「ダイバーシティ推進担当」として女性管理職 1 名、女性担当者 1 名を配置。また、ダイバーシティ推進の主旨・意義を全社に周知するため、6 〜7 月に全国 3 ヵ所で、女性社員、社長ほか役員、女性社員を部下に持つ管理職を集めて 「女性 活躍推進全体会議」を開催した。2017 年度までに、女性の管理職比率を現在の0.4%から3.2%に、総合職比率は現在の5.0%から11.9%に引き上げ、将来的には女性管理職比率30%、総合職比率40%を目指す。

(Future 2014年8月11日号)

大王製紙/中国の並行輸入業者に対する訴訟で和解成立
 大王製紙は、中国・上海の並行輸入業者がベビー用紙おむつ『GOO.N』を並行輸入しようとしたことに対し、輸入の差止めと、並行輸入品の廃棄・没収などを求める訴訟を起こしていたが、和解が成立し、このほど大王製紙立会いのもと廃棄が完了した。
 大王製紙は2013年12月、中国江蘇省連雲港税関において、並行輸入業者が輸入しようとした大王製紙の『GOO.N』を差止め、さらに同業者に対して14年3月5日、並行輸入品の廃棄・没収、販売行為の差止めなどを求める民事訴訟を連雲港市中級人民法院に提起した。開廷初日の4月28日に同業者より和解の申し入れがあり、5月14日に裁判官立会いのもと、@差押えられた日本国内限定販売品を廃棄する A大王製紙の許諾なしに大王製紙の商品を販売しないことで和解が成立した。そして6月27日、大王立会いのもと、差押えられた日本国内限定販売品の廃棄が完了したもの。
 中国質検総局が発表した2013年の「衛生用品の輸入状況」によれば、日本から輸入した紙おむつや生理用品で検査不合格が急増しており、その理由は「中国国内の商社が日本で買い付け、中国に輸入しているため」とされている。大王製紙の『GOO.N』についても、並行輸入品の保管状況が悪く本来の尿吸収性能が発揮できなかったり、リパックされた並行輸入品のパッケージが破損していたため税関で廃棄されたなどの事例があった。また日本国内では、中国の並行輸入業者により商品が買い占められ、店頭で品不足になるという事態も起きていた。
 大王製紙は、正規ルート以外の商品はパッケージに「日本国内限定販売品(FOR SALE IN JAPAN ONLY)」と記載し、また国内代理店とは「GOO.Nの販売地域を日本国内に限定する」旨の契約書を締結するなどして、海外流出を防いできた。必要に応じて訴訟で並行輸入品を排除したケースもあり、今回の訴訟もその一つ。

(Future 2014年8月11日号)

ハビックス/化合繊不織布の生産設備を増設
 ハビックスは、岐阜県の本巣工場に化合繊不織布の生産設備を増設する。11月に着工し、2015年8月の操業開始を目指す。増設による拡張分は約2,600uで、これにより本巣工場の延床面積は約6,000uとなる。総投資額は約20億円、内訳は工場建屋6億円、機械設備14億円。
 ハビックスは12年12月に同工場を新設し、紙おむつなどに使用される化合繊不織布の生産を開始、以降、順調に受注を獲得してきた。今後の衛生材料市場の需要拡大を見込み、今回の生産能力増強を決めた。

(Future 2014年8月25日号)

日本紙パルプ商事/岩手県で売電事業に参入
 日本紙パルプ商事は、新エネルギー開発鰍ニの共同出資により、岩手県野田村に竃田バイオパワーJPを立ち上げ、新たに木質バイオマス発電事業を開始する。
 野田バイオパワーJPは2016年4月の稼働を目指し、年間総発電量約9,648万kWhの発電設備を建設。発電した電力は再生可能エネルギー固定価格買取制度を利用して、全量電力会社へ売電する予定。燃料となる木質チップに未利用材だけでなくバーク(樹皮)も使用することで、地域林業および野田村の震災復興に貢献する。
 なお日本紙パルプ商事は、島根県松江市でも電力会社への電力供給を目的としたバイオマス発電事業に共同参画し、2015年4月の稼働を目指して現在設備の建設を進めている。
 〔野田バイオパワーJPの概要〕
・所在地;岩手県九戸郡野田村大字野田14地割67番地1
・資本金/出資比率;4億6,800万円(日本紙パルプ商事77.78%、新エネルギー開発22.22%)
・事業内容;木質バイオマス発電
・使用燃料;未利用材、バーク、剪定枝、PKS(パームヤシの実の種殻)合計年間14万t
・燃料調達先;野田村森林組合、岩手県内森林組合および林業者ほか
・主要設備;流動層ボイラー、蒸気タービン発電機
・発電出力;1万4,000kW
・年間発電量;9,648万kWh(約2万6,800世帯分の年間使用電力量に相当)
・売電収入見込;年間約26億円
・総投資額;約65億円

(Future 2014年8月25日号)

丸紅紙パルプ販売/子会社「富士コーテッドペーパー」を吸収合併
 丸紅紙パルプ販売はこのほど、10月1日付で完全子会社の富士コーテッドペーパーを吸収合併すると発表した。

(Future 2014年8月25日号)

日本製紙連合会/古紙配合率問題フォローアップ調査結果を発表
 日本製紙連合会はこのほど、古紙配合率問題に関わるフォローアップ調査(対象期間:2013年7月1日〜14年6月30日)の結果を、次の通り発表した。
 (1) 「古紙パルプ等配合率検証制度」および「再生紙の表示」の運用状況
・問題なく運用されており、需要家からの指摘等の問題は発生していない
・取引先による立ち入り監査は19社66件で前年並み▽社内内部監査は、再生紙製造企業では全社が実施している。また第三者機関による監査を実施している企業は、再生紙製造企業が3分の2、全体が3分の1だった
 (2) コンプライアンスへの取組み
 @ 社内コンプライアンス体制の強化・研修・教育の実施
・3分の2の企業でコンプライアンスに関わる研修、教育が行われていた
・社内のコンプライアンス体制・組織の見直し改善等に関しては、「新たにISOによる管理確認を行うようになった」「監査室が直接古紙配合率リストを確認するように変更した」「法務部を新設した」などの回答があった
 A 受注体制・生産管理体制および情報開示等に関する見直し
・変更、見直しなどはなかった
 (3) 古紙配合率問題全般についての意見
・古紙配合率問題を風化させないためフォローアップ調査は継続すべき
・グリーン購入法の特定調達品目の判断基準における産業古紙および損紙の定義が明確化されたので、輸入再生紙においても厳格な管理が行われるべき
 日本製紙連合会は2008年に起きた古紙配合率問題を受け、古紙配合率問題検討委員会を設置、再発防止に取り組んできた。予定の5年間が終了し委員会は廃止するが、フォローアップ調査は継続することが決まり、またフォローアップ調査を実施する組織として、従来の「PL対策小委員会」を「品質保証委員会」に改組し、フォローアップ調査に加えて製品安全やコンプライアンスなど、紙・板紙の品質保証全般を取り扱うこととなった。

(Future 2014年8月11日号)

富士市/中小製紙向けに熱電併給事業を計画
 富士市は市内の中小製紙会社向けに、低料金による電気・熱の供給システムを整備する。2016(平成28)年度に市内3ヵ所へ熱電併給(コージェネレーション)システムを導入する計画であり、設置・運営は静岡ガスが担当する見通し。

 大震災契機にプランを検討
 システムは今泉・原田・久沢に

 富士市内には約50社の中小製紙会社が立地しているが、最近はエネルギーコストの高騰が経営の圧迫要因となっており、市として生産活動支援となる割安なエネルギーの供給網を構築することにしたもの。同計画は今年6月末、総務省が募集する「分散型エネルギーインフラ」プロジェクトにおいて全国13ヵ所で策定されたマスタープランの1つに選ばれており、同事業の受託額は5,500万円。
 初年度となる2014年度は前記した国の受託資金を活用し、都市ガスによるコージェネレーションシステムの設置場所などを選定する。現在の計画では、今泉・原田・久沢の3つのエリアにコージェネ設備を建設し、各設備からそれぞれのエリアにある中小製紙3〜5社程度へエネルギーを供給するという構想。供給先としては今泉では丸富製紙など5社、原田ではイデワコーなど3社、久沢では丸井製紙など6社が候補にあがっている。
 この事業はコージェネやバイオマスボイラーを運用する民間企業主体の「地域エネルギー会社」、熱導管などのインフラを整備し熱エネルギーを供給する富士市主体の「地域エネルギーインフラ会社」、各エネルギー事業から発生する余剰電力を集約し需要家に売電する「地域PPS会社」の3者で運営される。ちなみに、PPSとは大電力消費の工場など「特定規模需要家」に電力供給を行う業者のことで、経済産業省は12年にその通称を「新電力」と改めている。
 富士市はコージェネシステムの設置・運営を電力小売が可能なこの新電力に任せる方針であり、静岡ガスに新電力として計画に参加するよう要請する考え。中小製紙会社には各種設備の稼働に使われる電気のほか、紙の乾燥工程で使われる熱も供給するが、熱導管の敷設については国等の支援を受け市が中心となって整備することを検討、15年度にコージェネシステムおよび熱導管を着工する予定。また、同システムで余剰電力が発生した場合は新電力が一般家庭や商業施設、他の工場などへ売電することになるという(図3)。
こうした地域におけるエネルギー供給のプロジェクトは当初、11年度に発足した静岡県の「分散型エネルギーシステム活用研究会」で検討され、それに富士市も参加していた。折しも東日本大震災が発生し電力不足や計画停電などの問題が浮上、これを受ける形で本格的な検討段階に入っていった。そこでの構想の基本となったのが静岡ガスの提案する分散電源案であり、この時点では電源コージェネと地域PPSの組合せによる計画内容にとどまり、地域への熱供給はまだ含まれていなかった。翌12年度に研究会は「分散型エネルギーシステム推進協議会」となったが、調査が進むうちコスト面の問題が浮き彫りとなるなど、プラン実現の難しさが指摘されるようになってきた。
 それが13年度になると一転、富士市が主体となって取り組むプランへと変わっていった。つまり、地域経済の活性化を考えた場合、同市の代表的な産業である製紙業の中小製紙各社がとくにエネルギーコストの上昇に苦しんでおり、その対策が喫緊の課題とされていたのである。LNG価格の高騰は全国的傾向ではあったが、東京電力管内での電気料金値上げは富士市の製紙業にとって地域間格差を助長する要因となっていたため、市が独自に予算を確保し対策を講じていこうとの流れに変わっていったということであろう。
 13年4月には富士市電力需要研究会が発足、静岡県はそれに参加する形で調査支援や助言などを行った。小長井義正・富士市長は「割安なエネルギーを供給することは市の産業振興にとって重要」と認識し、このプロジェクトを地域経済活性化につなげていく考えを表明している。同市では地域経済への波及効果について以下の効果を見込んでいる。
 @ 資金循環効果
 地域エネルギーインフラ投資に対するエネルギー事業売上累計・11倍
 A エネルギーコスト削減
 年間のエネルギーコスト内部循環・約49億円
 B 新産業創出
 林業関連産業の創出・活性化など(今回のプラン策定で定量効果を算定)

 課題は規制緩和と配管コストか
 15年度にプロジェクトの着工へ

 当初、このプロジェクトは地域に立地する大手企業の大工場に発電所を設置して配電するとの構想で進められようとしていたが、大工場は電力会社からの「特別高圧受電」により比較的低コストで電力を確保できるためコージェネ導入の効果は小さいことがわかった。これに対し、複数の中小工場を対象にして一括供給する形とした方がメリットは大きいと判断されて計画の軌道修正が行われた。
 富士市は総務省が募集していた「分散型エネルギーインフラ」プロジェクトの導入可能性調査を13年10月に受託、富士市分散型エネルギーインフラプロジェクト研究会を発足させ計4回開催。製紙メーカーや静岡ガス、日本総合研究所などと合同研究した結果を今年3月報告書にして総務省へ提出し、マスタープラン策定事業の受託が決まった。
これは政府が打ち出した「国土強靭化」(ナショナル・レジリエンス)、すなわち、現在沿岸部に集中する大型発電所(海岸地帯97%)を少しでも内陸化し(少なくとも沿岸7:内陸3の比率)、津波など自然災害に対し国土を強靭化していくとの意向にも沿っているため、経済産業省による側面からの協力も得られることになっている。同様に、分散型エネルギーインフラについては国土交通省や環境省なども独自に施策検討や支援活動を展開しており、そうしたバックアップも期待されている。
 このプロジェクトで導入されるコージェネシステムのエネルギー供給規模についてだが、完成後は1ヵ所でガスタービン発電量は7,000〜8,000kW、蒸気発生量は16〜18t/hになる模様で、蒸気量としては製紙工場すべてを賄うには十分でないため、変動分への対応も含め各製紙工場では蒸気自給も必要になると見られている。電気の一部は「特定供給」を想定しているが、発電所が置かれる工場内での電気供給は問題ないものの、現時点では近隣工場への送電が規制されていることから、これをどうクリアするか、あるいは国による規制緩和がどのように進められるかが今後の重要なポイントとなってこよう。
 また、蒸気に関し従来は地域環境に配慮して地下配管が検討されてきたが、設置コストがかさむため地上配管へ変更するか、あるいは地下配管でも浅い部分に設置してコスト低減を図るかなど、諸要素を考慮しながら再検討が行われることになっている。
同プランの実施手順は対象となる事業者、金融機関、市が、14年度の事業性評価結果と国等からの支援を踏まえて決められていこうが、関係者の合意が得られれば15年度には プラン実現に向け着工できる見通しである。
富士市では今年7月に配管などを敷設する場所のチェック、および発電所を設置する工場内の確認など現地調査を行っており、今秋までにプロジェクトの素案を策定、具体的な予算を詰めていき再度製紙会社へ費用などを提示していくことになる。まだ大きな要素であるエネルギーコストが確定する段階にはないが、従来より少なくとも数%程度の削減を目標に算出されることになるという。

 燃料転換できない中小には朗報
 次の段階では非化石燃料使用も

 中小製紙工場ではかつてA重油が使用されていたが、コスト問題からLNG(液化天然ガス)化していったという経緯がある。このため最近のLNG高騰の下でも、石化燃料全体が値上がりしていることに加え、他の安価な燃料へ転換するにはボイラーなど設備費の負担が大きい。つまり、石炭やバイオマスなどに変えれば燃料コストを抑えられるが、大型ボイラーの設置が前提となるため中小製紙会社単独の設置は現実的ではないということである。今回の熱電併給システムでは天然ガスを使用するが、エネルギー変換効率がよく省エネルギー効果が大きいため省コストとなり、環境面でもCO2排出量が削減されて地球温暖化対策に繋がる。
 今回のプロジェクトでは地域のエネルギー源を徹底的に活用していく方針であり、当初の計画立案では天然ガスコージェネレーションの構想で進められ、すでに各種の具体的検討が完了していたこともあって、これをプロジェクトの第1段階と設定。さらに第2段階では木質・バイオマス(廃棄物)、第3段階では地下水熱、工場排熱の利用がそれぞれ構想されている。
 木質に関しては市内林業組合と連携した間伐材の利用や、新環境クリーンセンターでの廃棄物発電との連携などを行う。前者は市内から木質を集める際のケーススタディを行っているが、すでに利用されているものもあり持続可能な森林管理の範囲でできるだけ活用していくということになりそうである。また地下水熱については14年度の研究対象となっており、富士山麓地域の地下水が年間を通じ約15℃であることから、これをヒートポンプなどにより夏は冷房・冬は暖房に利用すること狙っている。この地下水利用のメリットは、富士市ではすでに多くの事業所が井戸を所有あるいは使用しており、極端に言えば熱交換器を導入すればすぐにその効果の恩恵を享受できる。事実、同地域の製紙会社として五條製紙の取組みがあり、これは地下水を活用した熱交換システムのモデル事業として国の補助を得て大きな省エネ効果をもたらしている。
 このように富士市では地域経済を支えてきた製紙業の活性化策を積極的に推進しており、新たな産業振興の事例として今後とも注目を集めていくことになりそうである。

(2014年紙パルプ技術タイムス9月号)

紙のエレクトロニクス応用研究会/ 産・学とアートのコラボ効果を狙い7月25日に発足
 「紙のエレクトロクス応用研究会」の設立発起人会議が7月24日、東京・西麻布のマテリアル・ガーデンで催され、代表幹事に筑波大学の江前敏晴教授を選出し、事務局のブライター・レイターの山下潤一郎氏から説明のあった会則案が承認され、翌25日より発足し正式に活動をスタートさせた。
 同研究会の設立は、「大学などの研究機関における紙のエレクトロニクスサイエンス研究を基に、参加するクリエイターや企業が、紙のエレクトロニクス応用展開を積極的に行い、製品やサービス、ソリューションなどを開発・提供し、関連業界にイノベーションの波を起こす」ことを目的に準備を進めていたもの。当日の会議には江前氏や山下氏をはじめ東京大学大学院情報理工学系研究科の川原圭博准教授、東京工芸大学工学部メディア画像学科の佐藤利文教授などのほか、三菱製紙・イメージング事業部京都R&Dセンターの志野成樹部長研究員、AgICの杉本雅明取締役、システムクリエイツの小杉博俊代表取締役などの発起人が出席、また三菱製紙、王子ホールディングス、北越紀州製紙、ハリマ化成などの製紙関係をはじめ、小森マシナリー、東洋インキSCホールディングス、リコー、東急エージェンシー、K。k。プロジェクトなどから一般参加者が参集、紙や印刷関係の報道関係者も駆けつけた。
 冒頭、山下氏より開会の辞が述べられた後、同氏の司会により議事進行が行われ、発起人代表として江前氏が紙のエレクトロニクスについての説明も兼ねて大要以下のような挨拶を行った。
 「紙のエレクトロニクスについては今年5月のNHKニュースでも“ペーパーエレクトロニクス”として取り上げられた。一般的にエレクトロニクス製品のプリント配線基板にはエポキシ樹脂が多く使われているが、紙だけでも同様の役割をもたせることができるという点が注目されたのだと思う。
 私も2009年頃から各種の紙の上に銀ナノ粒子のインクで配線し電気を流して抵抗値を調べるなど、材料学的な部分も含め研究に取り組んでいたが、紙のエレクトロニクスが一般にも知られるようになって山下氏と小杉氏の両名がそれを広く普及できないかと相談にこられた。大学の研究成果を製造業などの企業と共同で製品化しても成功しないケースが多く、そこには実際の社会における使われ方を熟知しているコーディネーターやクリエイター、そしてデザイン面での訴求効果で優れるアーティストが媒体役として必要との考えに賛同し、ともに製品化・市場化を進めていくことになった。つまり、研究者は紙の材料としての機能性や電気特性、化学的特性などを分析し、コーディネーターやデザイナーは製品を市場ニーズにマッチした色や形状などにし、企業は製造段階における生産効率やコストダウンなどを考え、最適な市場化の仕組みを形成させていこうという趣旨である。
 すでに濃度センサーや太陽電池用のキャパシタなど研究段階での応用範囲は広がっているが、製品化するには課題も残されており、例えば耐久性を付与することで印刷技術をつかった薄膜トランジスタや商品管理用のICタグ(RFID)、健康管理・医療向けの各種デバイスなどとして提供できるようになる。同様に液体センサーでは電圧や電流などを定常的に計測して重金属イオンや放射性物質などの検出に使える可能性があり、実現すればかなり低コストで供給できるため社会貢献にも繋がっていく。
 これら用途はプラスチックで十分との見方もあるが、紙を使うことの利点は多く、そのことを改めて押さえておくと次のようになる。まず安価である。これは他の素材に比べ明らかに優れた点であり、製品量産化ができればさらに大きな価値を生む。次にフレキシブルであること。極端に言えばエレクトロニクスを折り紙のように扱える。それから印刷適性。もともと紙は印刷媒体として発展してきた素材で、導電性インクの印刷も容易であり、印刷技術により応用範囲は広がっていく。環境面も通常の古紙回収システムによりリサイクル可能で、印刷された金属類も紙の繊維と比重差が大きいため製紙工場の古紙処理工程で容易に分離回収が行える。また焼却処理ができ使い捨て用途に最適といった易廃棄性があり、環境に負荷を与えない生分解性でも用途が出てくる。デメリットはあるがメリットの方がはるかに多い。
 研究会では技術交流や情報交換など各種事業に取り組んでいくが、他方では公的予算を獲得し更なる研究推進も必要であろう。例えば、文科省所管の日本科学振興機構(JST)では公募による各種研究への予算配分を行っており、その1つに研究成果最適展開支援プログラム(A─STEP)がある。大学の研究成果などを実用化するための開発費を支給するものだが、当研究会発足後の検討テーマとしてこのA─STEPへの申請があげられる。同様に、JST内にある社会技術研究開発センター(RISTEX)では社会に貢献する研究開発、どちらかと言えば文系的な研究開発になろうが、そうした支援プログラムが用意されており、少子高齢化が進行するなかで各世代が幸福に暮す“持続可能な多世代共創社会”の実現に役立つものとしての観点から申請することも考えられる。
以上のような取組みにより、紙のエレクトロニクスは地域社会へ入り込んでいき、日常生活の有効な道具として大きな市場を形成していくことになろう。それが、この研究会設立の目指すものである」
 江前氏挨拶に続き、発起人および一般参加者の自己紹介、「紙のエレクトロニクス応用研究会」の設立趣旨や特徴などについての説明、会則案の承認などが行われた。次いで幹事および代表幹事を選出して設立発起人会議は終了したが、引き続き同会場で懇親会が催された。懇親会では、インクジェットプリンタを使って銀ナノ粒子導電インクによる配線を紙へデザイン的に印刷し名刺を作成、USBメモリのようにパソコンから電気を取り込み名刺に貼り付けたLEDを発光させるなど、紙のエレクトロニクスを象徴するような用途の実演も行われた。
以下、同研究会の概要について簡単に紹介しておこう。
 〔研究会のミッション〕
 大学などの研究機関における最先端の紙のエレクトロニクスサイエンス研究を基に、参加するクリエイターや企業が紙のエレクトロニクス応用展開を積極的に行い、製品やサービス、ソリューションなどを開発・提供し、関連業界にイノベーションの波を起こす。
また、カーボンニュートラルなバイオマス素材の利用、カーボンニュートラルエレクトロニクス、金属の回収が容易なエレクトロニクスなど、環境負荷を抑える技術・製品・サービスなどの開発への取組みを通じて持続可能な循環型社会実現に貢献する。
 〔研究会の特徴〕
・紙のエレクトロニクスサイエンスに関する最先端の研究者が参加している
・イノベーションを促進するクリエイターやアーティストが参加している
・イノベーション志向の高い企業が参加している
 〔活動構想〕
事業活動は共同研究・製品化活動、技術・情報発表会、技術・情報交流会の開催、関連展示会への出展、会員向け情報配信、その他などだが、当面の具体的な事業としては以下のものを予定している。
・「話題のAgIC導電インクを体験しよう〜ものづくりを楽しむワークショップ」(2014年8月23日、3×3 Labo;東京・丸の内)
・「第1回技術交流会」(14年10月、以後年に2回程度開催)
・「銀ナノインクで創る未来の年賀状ワークショップ」(14年11月 1〜3日、東京・丸の内;KITTE)
・「IGAS 2015」における同研究会の研究成果発表(15年9月11〜16日、東京ビッグサイト)
・Facebookの非公開ページにおける会員向けの情報発信
・Facebookの公開ページにおける一般向け情報発信
URL https://www.facebook.com/PrintedElectronics

 〔問合せ先〕
 紙のエレクトロニクス応用研究会
 (事務局・山下)
 〒106-0031 東京都港区西麻布2-24-2
 Material Garden(KREIビル)
 e-mail yamashita@BrighterLater.jp

(2014年紙パルプ技術タイムス9月号)

日本製紙/古紙高配合を保証した蛍光紙『ルシオライト』
 日本製紙はこのほど、蛍光色ファンシーペーパーの新シリーズ『ルシオライト』を発売した。
 『ルシオライト』シリーズは、世界初(同社調べ)の古紙パルプ70%配合を保証した蛍光色ファンシーペーパー。4色の鮮やかな蛍光色を揃え、厚さは3種類をラインアップした。原料となるパルプを染色して製造するため、断面も同じ色という特徴を持ち、ファンシーや紙製品、POP業界のほか、さまざまな用途での採用が期待される。生産は富士工場の2号抄紙機。
【色】蛍光イエロー、蛍光グリーン、蛍光ピンク、蛍光オレンジの4色
【厚さ】中厚口(紙厚93μm前後)、厚口(111μm前後)、特厚口(148μm前後) *サイズは四六判(T目)

(Future 2014年8月4日号)

日本製紙、ヤクルト、四国化工機/乳酸菌ソイαの容器が3つの包装コンテストで受賞
 日本製紙とヤクルト本社、四国化工機は、ヤクルト“乳酸菌ソイα”の容器について「2013日本パッケージングコンテスト」(日本包装技術協会主催)の「飲料包装部門賞」「アジアスター2013コンテスト」(アジア包装連盟主催)の「アジアスター賞」、さらに「ワールドスター2014コンテスト」(世界包装機構主催)で「ワールドスター賞」を受賞した。
 今回受賞した乳酸菌ソイαの容器は、日本製紙による“ノンアルミフジパック”システムのチルドタイプ(冷蔵流通)を採用したもので、アルミ箔層の代わりにPET層を設けることによって酸素バリア性をもたせ、冷蔵流通を可能にすると同時に、牛乳パックと同じ一般的なルートで回収できる環境に配慮した容器。また、同社とヤクルト本社が共同で開発した内容物被覆とストローの突き刺しやすさを両立させた「ストロー挿入孔」を備えている。
 日本製紙は、これまで高度な液体充填技術を有する四国化工機と共同で開発した、常温で長期保存可能な“フジパック”システムを販売してきたが、環境配慮の視点から同システムの多角化を図り、昨年5月にアルミ箔を使用しない“ノンアルミフジパック”システムとしてチルドタイプ(冷蔵流通)を上市。今年3月には常温保存(ロングライフ)タイプを発売し、伊藤園の野菜飲料“充実野菜”シリーズの一部商品に採用されている。

(2014年紙パルプ技術タイムス9月号)

レンゴー/ハワイの新工場が竣工
 ハワイで事業展開する、レンゴーの100%子会社Rengo Packaging, Inc.は7月1日、ハワイ・オアフ島に開設した段ボール新工場の竣工式を開催した。
 新工場はホノルルの西部近郊に位置するマラコレ工業団地にあり、敷地面積3万4,398u、建築面積1万4,465uの規模。ハワイで唯一の段ボール工場として、段ボールシート・ケースを生産していく。
 これまでハワイで使用される段ボール製品は、すべて米国西海岸から海路輸送されていたが、新工場の完成により、品質向上はもちろん、受注から納品までのリードタイムが大幅に短縮されることになる。Rengo Packagingは今後、レンゴーグループとして米国本土市場も見据え、事業基盤をさらに強化していく考え。
 〔Rengo Packagingの概要〕
 設  立;2011年4月14日
 資 本 金;4,800万j
 事業内容;段ボールケースの製造販売、包装資材の販売
 従業員数;43名

(Future 2014年7月21日号)

日本製紙/石巻工場内で“CfFA”事業を開始
 日本製紙はかねて公表していた通り、潟[ロテクノなどとともに、7月1日付で石巻工場内に「日本製紙ゼロテクノ東北有限責任事業組合」を設立した。
 東北地方の震災復興に貢献する建設資材として、コンクリート用混和材の高品質フライアッシュ“CfFA”の事業化を目指す。併せて、工場敷地内に“CfFA”製造装置の設置工事を開始する。製造装置は2016年1月から本格稼働する予定で、生産能力は年間約1万t。稼働するまでの間は、サンプル提供などを通じて“CfFA”の認知向上などプレマーケティング活動を進めていく。
 〔日本製紙ゼロテクノ東北の概要〕
 所 在 地;宮城県石巻市南光町2-2-1(日本製紙石巻工場内)
 組 合 員;日本製紙、ゼロテクノ、久田真(東北大学)、佐藤嘉昭(大分大学)
 出 資 金;3,000万円
 営業拠点;宮城県仙台市青葉区五橋1-1-10 第二河北ビル(日本製紙東北営業支社内)
 主な事業;“CfFA”のサンプル提供、普及に向けた共同研究会の実施など

(Future 2014年7月21日号)

王子ホールディングス/水環境事業に進出
 王子ホールディングスは、水環境事業への本格進出のため、7月1日付でイノベーション推進本部内に「水環境研究所」を設立した。
 王子グループはこれまで、国内外の森づくりで水源涵養や水資源活用に関する技術を構築し、また紙づくりでは排水処理や水の再利用に関する技術を蓄積してきた。さらにビジネス面では、王子エンジニアリングを中心に水環境事業を展開している。今回の研究所新設は、これらの技術をさらに進化させ、国内外の水インフラ全般を対象に事業展開するため。
 世界には、水インフラが整備されていなかったり、経済発展とともに水環境問題が顕在化し始めた国々が多数ある。王子グループでは今後、日本はもとより、東アジア、東南アジア、オセアニア、南米、北米を対象に、上下水、各種工場排水、産廃処理排液、畜産排液、農業用水処理など、水インフラ全般を想定し事業展開していく考え。

(Future 2014年7月21日号)


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