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紙パルプ産業と環境 2020

「SDGsと持続可能な社会への貢献」


連の提唱するSDGs(持続可能な開発目標)への取組みが、官民を問わず加速しています。これは環境と経済を並立的・対立的に捉えるのではなく、初めから一体のものとして位置づけることにより、さまざまな社会問題を解決しようとする考え方です。具体的には17のゴールと169のターゲットを掲げており、スローガンは「誰一人、取り残さない(Leaving No One Left Behind)」というもの。17あるゴール目標のうち、例えば⑦エネルギーを皆に、そしてクリーンに ⑫作る責任、使う責任 ⑮陸の豊かさも守ろう――といった項目は紙パルプ産業の取組みとも親和性が高いと言えるでしょう。明年に迫った東京オリンピック・パラリンピック競技大会の組織委員会もまた、SDGsへの貢献を明確化しています。
そしてSDGsのゴールの一つ⑭海の豊かさを守ろう、に関連して、このところ大きな関心を集めているのがプラスチックごみによる海洋汚染問題です。プラスチックは人間の社会経済生活に多大な利便性と恩恵をもたらした素材ですが、紙や金属などの他素材に比べ有効利用される割合が低く、未利用の廃プラが不適切に処理されることによる環境汚染が深刻化しています。
こうした中、日本では今年1月、プラスチック製品の持続可能な使用や代替素材の開発・導入を推進しイノベーションを加速させるとともに、業種を超えた幅広い関係者の連携強化を図るためのプラットフォームとして「クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス(CLOMA)」が設立され、紙パルプ関連業界からも多くの企業が参加しています。このCLOMAでは、「素材の提供側と利用側企業の技術・ビジネスマッチングや先行事例の情報発信等を通じた情報の共有」が活動テーマの一つになっており、紙素材側からの積極的な代替提案が期待されています。
一方、世界に目を転じると、製紙原料における古紙の役割は一段と高まりつつあります。しかしその一方、アジア各国では再生資源に対する輸入規制が強化されており、その一環として低品質の古紙を市場から閉め出す動きが強まっています。世界最大の古紙消費国である中国はすでに2018年からミックス古紙の輸入を禁止していますが、さらに2020年末にはすべての古紙輸入をシャットアウトする方針です。欧米品に比べ品質上の優位性がある日本の古紙についても、例外扱いはされません。これまで年間300万t近い古紙を中国へ輸出することで国内の需給バランスを保ってきた日本の製紙−古紙業界としては新たな輸出市場の開拓と併せ、異物の混入などを極小化した高品質の古紙を安定供給していく努力が従前にも増して求められます。
弊社は長年にわたり“紙”を中心に据えた出版活動に携わってきた立場から、毎年『紙パルプ産業と環境』シリーズとして環境問題に焦点を当てた出版物を刊行してきていますが、今夏刊行予定の2020年版ではSDGsでもうたわれている『SDGsと持続可能な社会への貢献~陸の豊かさ、海の豊かさをどう担保するか~』と題し、業界内に限らず関連他産業の企業をはじめ一般消費者、市民運動団体、官庁・公共機関など広範な対象の方々が紙パの実情に対する理解を深めるための有益な1冊となるよう構成・編集しました。

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再生可能エネルギーや発電事業、バイオマス利用の可能性、古紙・森林の新たな課題を追う。

B5判・本文212頁

定価 2,200円(税込・送料別)

2019年8月26日

本書の内容

●海洋プラスチック問題の現在

G20 大阪サミット 海洋プラごみ「2050年ゼロ」で合意

クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス(CLOMA)海洋プラごみ問題の解決に向け設立

世界各国・地域に広がる廃プラ規制 中国に代わる受け皿はなく原点回帰で国内処理が必須に

紙素材がもつ可能性 「紙でできることは紙で。」─日本製紙グループのパッケージ戦略 日本製紙㈱パッケージング・コミュニケーションセンター 野田貴治

私はこう考える 北越コーポレーション㈱環境統括部長 中俣恵一 海洋プラスチック問題に関する欧州の視点

私はこう考える 岩崎誠プラスチック包材から紙の包材へ ─ 内外で活発化する代替素材の製品開発

●世界の古紙需給と日本の課題

インタビュー 全国製紙原料商工組合連合会 栗原正雄 理事長 国内のリサイクルシステムを守るためには赤字輸出もやむを得ない

インタビュー ㈱トーチインターナショナル 龍国志 代表取締役社長 中国向けに古紙を大量輸出するビジネスモデルは終わりを迎えている

日本の古紙需給とメーカー別消費 需給は前年割れ、価格高騰で他品種シフトが活発化した2018年

世界の古紙需給 日本の消費量は世界第4位に後退 次第に高まるアジアの域内自給率

付表① 世界の国・地域別古紙需給(2016~17年) 付表② 世界各国の古紙回収率・利用率試算(2016~17年)

●中国の固形廃棄物輸入規制

中国の固形廃棄物輸入管理制度改革 段階的に増加する輸入制限品目、輸入可能な港は18港に制限

国際リサイクルシステムの変化と各国の反応 再生資源の品質向上に向けた投資と分業は進むのか

第7回「日中古紙セミナー」から 回収業界のレベルアップが進む中国

●紙おむつリサイクルの取組み

新たなリサイクルの取組み 超高齢化社会突入で動き出した使用済み紙おむつの再資源化

インタビュー ユニ・チャーム㈱ Corporate Social Responsibility本部参与,工学博士 宮澤清氏 オゾン処理法の採用により紙おむつの循環モデルを確立

インタビュー ㈱LIXIL LIXIL Water Technology Japanデザイン・新技術統括部技術研究所機構技術開発グループリーダー 渡邊弘明氏 破砕・分離・回収により臭気防止と減容化を実現

●気候変動と森林認証の役割

私はこう考える FSCジャパン 副代表 速水亨氏 SDGsも追い風にして着実に高まるFSCの認知度

SGEC/PEFC国際森林認証フォーラム 急拡大するアジアの森林認証面積 CoC認証は世界の2万社超が取得

私はこう考える WWFジャパン 会長 末吉竹二郎 (国連環境計画・金融イニシアチブ〈UNEP FI〉特別顧問) 自国にない資源(化石燃料)を守るより自国にある資源(RE)で活力を

●資料・統計
データで見る紙パの環境対応① 廃棄物対策:2020年度目標を早くも達成したが新たな課題も

データで見る紙パの環境対応② エネルギー:燃料転換の進展で著しい重油の使用減少

データで見る紙パの環境対応③ 違法伐採対策:モニタリング実施で継続的に取組み強化

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