業界ニュース

2009年

紙・板紙需給/7月の国内出荷は10ヵ月連続の前年割れに
日本製紙連合会が発表した紙・板紙需給速報によれば、7月の国内出荷は前年同月比13.6%減の222.6万tにとどまり、10ヵ月連続の前年割れとなった。前月の同12.7%減に比べマイナス幅が拡大しているのは、昨年7月が2.2%増と比較的堅調だったため。
一方、7月のメーカー輸出は37.6%減の7万tと大きく落ち込み、こちらも10ヵ月連続の前年割れ。ただし数量としては4月を底に3ヵ月連続で増えており、底打ちの気配もある。国内出荷+輸出の出荷合計では14.6%減の229.6万t。
これに対し7月の生産は14.8%減の225.1万tだった。この結果、在庫は前月比4.6万t減の202.3万tとなり、2ヵ月連続で減少した。過剰感の強かった紙で4.5万t減少したことが大きい。在庫率は88%と3ヵ月ぶりに80%台へ低下している。

(詳細は Future誌9月14日号 で)

紙類貿易/1〜6月期は輸入旺盛で輸出の2倍近くに膨らむ
わが国の今年上半期(09年1〜6月)紙類貿易統計がまとまった。昨秋から急激に冷え込んだ経済情勢に影響され、全体的に需要が減少する中でユーザーサイドによるさらなるコスト削減意欲を反映した形になっている。数量ベースでは、為替の円高基調を追い風にした輸入が前年同期比22.9%増の95万3,800t、輸出は逆に同45.0%減の49万6,000tと低調だった。大手洋紙メーカーによるS&Bを含む設備の新増設は、輸出市場の獲得を狙いの一つに計画されたものだけに、世界同時不況は不測の事態とはいえ、結果的にタイミングが悪かったようだ。

(詳細は Future誌9月7日号 で)

国内紙・板紙設備/休停止マシン34台の合計年産は142万tに
先進圏の紙パルプ産業に大幅減産と設備停止の嵐が吹き荒れている。世界経済の低迷に伴う需要の極端な落ち込みに対応するための措置だが、一方でアジアや南米においては大型設備増強の勢いが衰えていない点を勘案すると、百年に一度と言われる今回の不況は、これまで他の素材産業に比べて先進圏が比較的優位な立場にあった世界の紙パの勢力地図を、大幅に塗り替える契機となるのかもしれない。

(詳細は Future誌9月7日号 で)

中国政府/日韓両国からの輸入上質コート紙の反ダンピング関税を延長
中国政府の商業部は、日韓両国から輸入される上質コート紙への反ダンピング関税を、さらに5年間延長した。商業部は反ダンピング関税を廃止すればダンピングが再発し、中国の業界に被害を与えると考え、この決定を下した。
この制裁関税は4〜71%の税率で、2003年8月6日から5年間にわたり賦課されてきた。対象となる製品は米坪70〜350g/m2の上質コート紙で、事実上ほとんどの上質コート紙が該当する。
商業部は中国企業3社の請願を受けて、関税が期限切れとなる昨年8月6日に再検討を開始した。それから約1年にわたり審査を行う間も、この反ダンピング関税は引き続き適用されてきた。請願を行ったのはAPP中国の子会社である金東紙業、独立系の山東晨鳴紙業、い坊ヘンリアン上質コート紙。

(詳細は Future誌9月14日号 で)

北米輸出業者/高品質脱墨古紙アジア向け輸出が増加
北米のパルプ輸出業者は、米国産の高品質脱墨古紙(DIP)に対する海外需要が今後とも成長を続けると確信している。アジアでは08〜09年に、年産換算47万2,000tもの新設DIPラインが稼働を開始した。生産能力の増加傾向はそれだけ、この地における需要が旺盛であることを物語っている。

(詳細は Future誌9月7日号 で)

いわき大王製紙/ISO 27001の認証範囲を拡大
いわき大王製紙ではこのほど、情報セキュリティのマネジメントシステム「ISO 27001」の認証範囲を系列のいわき大王紙運輸にまで拡大、機密種類の引き取り〜処理に至るシステムを構築した。同社がISO 27001の認証を取得したのは2007年8月だが、すでにISO 9001の認証を00年7月に、同14001の認証を05年7月にそれぞれ取得しており、品質および環境管理の両面で国際的なマネジメントシステムを確立している。今回は、それに加えての27001認証取得となる。
ISO 27001は企業内の情報資産に関する適切なセキュリティ対策を定めた規格で、英国規格協会の「BS 7799」が源流と言われ、05年10月に国際規格となった。紙パで言えば、機密書類を製紙原料として再利用する際の処理システムを指し、これまでの例としては段原紙・更紙メーカーの岡山製紙(09年3月)や再生家庭紙メーカーの鶴見製紙(07年5月)が認証を取得している。

(詳細は Future誌9月7日号 で)

家庭紙3品種/上半期は数量はダウン、ティシュは金額もマイナス
家庭紙3品(ティシュ、トイレットペーパー、タオル用紙)の今年上半期動向(数量は1〜7月。7月は速報値)が別表のようにまとまった。それによると09年1〜7月期の出荷高はティシュが28万2,500t(前年同期比6.0%減)、トイレットペーパー(TP)が58万3,000t(同2.3%減)、タオルペーパーが8万9,800t(同2.6%増)で、主要2品がともに前年割れとなっている。また1〜6月期の販売金額では、ティシュが543億6,000万円(5.4%減)、TPが813億3,000万円(1.0%増)、タオルペーパーが149億4,000万円(0.1%増)と、こちらはティシュだけが前年割れの状況だった。

(詳細は Future誌9月14日号 で)

ザ・パック/埼玉に新工場を建設
ザ・パックは、埼玉県日高市に土地を取得し、2011年7月完成を目途に新工場を建設する。将来を見据えた事業規模拡大のため、生産能力の増強を図る考え。投資総額は約80億円。
<新工場の概要>
○名称…ザ・パック新東京工場(仮称)
○敷地面積…4万1,864m2
○建築面積…約1万9,000m2(予定)
○延床面積…約5万6,000m2(予定。ラック設備含む)
○設備…紙袋・紙器製造設備、物流設備
○投資額内訳…土地取得費約19億5,000万円、工場建設費約60億5,000万円(予定)
○資金調達…自己資金および借入金

(詳細は Future誌9月14日号 で)

實守紙業/「紙のサンリツ」を合併
製紙原料商の實守紙業(本社:大阪府八尾市。實守敏訓社長)は、関連会社で紙・紙加工機器・日用雑貨などの販売を主とする(株)紙のサンリツ(本社:大阪市。社長は同じ)を8月1日付で吸収合併した。
この合併により實守紙業は2,000万円増資して資本金が4,500万円となり(直近期売上高は約14億4,300万円)、さらなる経営合理化と経営基盤の強化が図られることとなった。

(詳細は Future誌9月7日号 で)

中島洋紙/(株)パデック(PaDeC)に社名変更
中島洋紙(本社:大阪府東大阪市。前田和久男社長)は9月21日から、「パデック」に社名変更する。同社は1942年の創業で、51年中島紙店に改組、64年現社名に改称した。
近年は印刷用紙の販売と物流を核に食品包装資材加工、昇華転写プリント事業と多角化を進めてきた。2006年に現在の前田社長が就任して以来、“紙と加工の両輪経営”というビジネスモデルの確立を進めてきたが、今後一層の事業拡大を目指し新時代に適した商号に変更したもの。新社名は社内公募により、「Paper・紙」「Delivery・配送(物流)」「Converting・加工」をイメージして「PaDeC(パデック)」と名づけられたもの。

(詳細は Future誌9月7日号 で)

小津産業/子会社で発生した火災の被害額を発表
小津産業は、去る7月6日に子会社アズフィットの神奈川愛川センターで発生した火災について、焼失資産の被害額を発表した。
焼失資産はほぼすべてに保険が付されているが、原状回復に要する費用、保険金額、当物流センターの再建計画、2010年5月期決算への影響などについては、確定次第公表するとしている。なお、火災の原因はまだ判明していない。
<焼失した資産の帳簿価額>
○建物・構築物…約4億7,300万円
○器具備品…約700万円
○商品…約1億8,000万円

(詳細は Future誌9月14日号 で)

関商店とIHI/次世代の固形燃料『C−RPF』を開発
紙とプラスチックを再利用した固形燃料「RPF」の有力メーカーとして知られる関商店(埼玉県久喜市)とIHI(東京都江東区)は共同で、次世代の固形燃料とも言うべき新しいタイプの『C−RPF(Char−Refuse Paper &Plastic Fuel)』を開発した。その名の示す通り“炭(Char)”に着目し、生ゴミなど一般可燃ゴミを利用した点に最大の特徴がある。
RPFが紙や木くずなどとプラスチックの混合燃料であるのに対し、C−RPFは炭化物とプラスチックを混合成形した固形燃料。一般廃棄物中の生ゴミなどバイオマス成分を含む可燃物を炭化し、この炭化物から異物を除去して水洗・脱塩して改質した後、廃プラスチックと混合成形して製品にする。このため原料調達が容易で、しかも石炭とほぼ同等の燃料効率を実現するなどメリットが多く、“次世代”と呼ばれるのにふさわしい環境対応品となっている。

(詳細は Future誌9月14日号 で)

王子製紙/第80回都市対抗野球に3年連続で出場
王子製紙(春日井市)野球部は都市対抗野球第80回記念大会に東海地区第7代表として3年連続9回目の出場を果たしたが、大会初日の第2試合、対三菱重工長崎(長崎市)戦に1対4で敗退した。
同野球部は、地区代表決定トーナメントでも打線の不振から苦戦し、記念大会として今年のみ増枠された第7代表に何とか喰い込み、出場を決めた。振り返れば優勝を果たした04年の第75回大会は第5代表、昨年の準優勝も第6代表での出場だったことから、「予選で苦労した年は好成績を収める」との下馬評も大会前にはあった。しかし本大会でも相手チームに先取点を許し、3投手の継投の前に4安打1得点に抑えられた。
地区予選後半で見せた必勝パターン、すなわち昨年の準優勝に貢献し若獅子賞を受賞した川口盛外投手の先発から、奥村孝一、蓬莱伸哉両投手の継投に持ち込めなかったことも敗因と言えよう。だが今大会から指揮を執った藤田貢新監督のもと、予選最終決定戦で延長14回の末にサヨナラ勝利を収めたミラクル王子の復活が、次の日本選手権では期待されるところだ。

(詳細は Future誌9月14日号 で)

中越紙パルプ工業/高岡本社オフィスがニューオフィス奨励賞
中越紙パルプ工業ではこのほど、高岡本社オフィスが、日本経済新聞社とニューオフィス推進協議会が主催する「第22回日経ニューオフィス賞」において、「地域ブロック別ニューオフィス奨励賞」を受賞した。
日経ニューオフィス賞は、快適で機能的なオフィスの普及促進のため、模範となる先進的なオフィスを表彰する賞。今年は113件の応募があった。
中越紙パルプ工業は、今年3月に営業と一部機能を除いて本社機能を東京・銀座から創業地の富山県高岡市に移転している。高岡本社オフィスのコンセプトは「現場と経営の一体」。製造現場である高岡工場と本社機能を効率的に統合していくうえで、社員力・組織力をアップさせるため、皆が集い対話するオフィスを目指した。アットホームな同社の文化を継承するため、“社員全員が家族のように住まうオフィス”の在り方についても検討、人・もの・情報が集まる住まいとして、「LIVING&DINING」というコミュニケーションゾーンを設けた。また機密管理などセキュリティ体制の充実にも力を入れるとともに、同社が取り組んでいる6 S改善活動をファシリティマネジメントのベースとしてレイアウトに反映させている。

(詳細は Future誌9月7日号 で)

紙の博物館/町田誠之氏著『回想の和紙』を発刊
「紙の博物館」の名誉顧問で数々の和紙文化への貢献により勲二等瑞宝章を受章している町田誠之氏がこのほど、紙の博物館の監修により単行本『回想の和紙』(東京書籍。本体2,095円)を発刊した。
同書は紙の博物館が来年6月に創立60周年を迎える記念事業の一つとして企画されたもので、今年96歳になる町田氏自身も矍鑠として校正や索引づくりなどを難なくこなしたという。
和装のなかなか凝った装幀で、
I こころの中の紙、
II 暮らしに見る紙、
III 粘りの世界
―の3部構成になっており、「人間が発明した品物で、紙ほど文化に役立ったものはないと言っても過言ではない。(中略)これからは、紙の上手な使い方を考えなければならない時代になっていることを悟らねばならない。紙が全く無用のものになることは絶対にないからである」と「はじめに」にあるように、町田氏の紙への“熱き”情熱が随所にほとばしっているような筆致で、紙の歴史から和紙の特徴や優れた点などを、豊富な資料を基に解説した良書となっている。

(詳細は Future誌9月7日号 で)

日本製紙連合会/09年内需試算を発表―8%減の厳しい見通し
日本製紙連合会は1月20日、「2009(平成21)年紙・板紙内需試算報告」を公表した。
それによると、09年の紙・板紙内需は2,826万t・前年比8.0%減(紙8.2%減、板紙7.8%減)と大幅な減少が見込まれ、全品種で対前年比マイナスを予測。マイナス成長は3年連続だが、3,000万tを下回るのは1994年以来。とくに印刷用紙は非塗工10.3%減、塗工11.3%減と2ケタの減少となっている(印刷・情報用紙合計でも10.1%減)ほか、板紙でも段原紙が8.5%のマイナス(ライナー、中芯原紙ともに8.5%減)。
また、マイナス要因としては100年に1度とされる景気不振がもっとも大きく、近年における紙・板紙の値上げを契機とする需要家の用紙使用見直し(軽量品および低グレード品へのシフト、チラシ・カタログ・パンフレット類や製品取扱説明書などの削減)の動きも継続。さらに広告の大幅減や出版不況の継続、企業における事務経費削減、人口減・少子高齢化や電子媒体への移行といった構造的要因も追い討ちをかけている。

(詳細は 紙パルプ技術タイムス 09年2月号 で)

王子製紙/苫小牧の新エネボイラー工事を延期
王子製紙は昨年12月22日、苫小牧工場で予定している新エネルギーボイラーの建設工事(投資額約140億円)を当面延期すると発表した。
この新エネボイラーは約12万t/年のRPFを主燃料とするもので能力は260t/h。当初計画では2010年度末の完成を予定していた。
今回の延期は、米国のサブプライムローン問題から波及した世界的な金融収縮にともなう紙パルプ事業へ影響、原燃料価格や資材価格の大幅な変動、紙需要の急激な減退など事業環境の将来性を見通すことがきわめて困難になりつつあることを踏まえたもの。

(詳細は 紙パルプ技術タイムス 09年2月号 で)

日本製紙/排出量取引の試行的実施に参加
日本製紙は、昨年10月21日に内閣府・地球温暖化対策推進本部で詳細内容が決定された「排出量取引の国内統合市場の試行的実施」制度への参加を申請した。
同社では、2007年4月に環境行動計画を見直し、「2010年度までに製品あたり化石エネルギー起源CO2排出原単位を1990年度比で16%削減する」目標を設定。これまでに重油ボイラーから新エネルギーボイラーへの転換、工場における省エネ推進などによって順調にCO2排出原単位の削減を進めており、今回の試行的実施への参加を通じ、課題の抽出や評価を行うとともに地球温暖化対策の有効な仕組みづくりに貢献していく考え。

(詳細は 紙パルプ技術タイムス 09年2月号 で)

レンゴー、大王製紙/排出量取引の試行的実施に参加
レンゴーと大王製紙はそれぞれ、政府が募集する「排出量取引の国内統合市場の試行的実施」に参加することを決めた。
これは政府の掲げる「低炭素社会づくり行動計画」の一環として、CO2排出量取引の制度設計上の課題を明らかにするとともに、わが国産業に見合った制度の在り方を検証するために実施されるもので、削減努力や技術開発に繋がる効果や市場メカニズムの適正な機能の見極めのほか、CO2が投機対象とならないようマネーゲームによる弊害などについても検証されることになっている。
まず、レンゴーはさらなる段ボールのリサイクル推進をはじめ、太陽光発電やバイオマスボイラーの導入などにより、化石燃料由来CO2発生量の1990年比18%減(2007年実績)を達成。さらに、2010年度には90年度比22%削減という目標を設定しており、目標達成への努力とともに、試行的実施への参加を通して排出量取引の課題の明確化にも寄与していく考えで、このほど参加申請を行い受理された。
一方、大王製紙は木質燃料やRPFといったバイオマス燃料の燃焼技術開発のほか、黒液回収ボイラーの効率改善などによって化石燃料からバイオマス燃料への転換に取り組み、CO2排出原単位削減を推進。今回の試行的実施への参加に当たり、
(1) 08年度;1.183t-CO2/紙t(90年度実績対比29.6%減)
(2) 09年度;1.172t-CO2/紙t(同30.3%減)
(3) 2010年度;1.153t-CO2/紙t(同31.4%減)
というCO2排出原単位削減目標を提示して参加申請を行った。

(詳細は 紙パルプ技術タイムス 09年1月号 で)

大王製紙/古紙100%PPC用紙の生産を増強
大王製紙は、グループ全体における古紙パルプ100%PPC用紙の生産能力を現状の3,000t/月から段階的に8,000t/月へ増強することを決め、25億円を投じていわき大王製紙に能力5,000t/月のPPC用紙加工設備を新設する。完成予定は2009年11月末。
大王では昨年初の古紙配合率乖離問題を踏まえ、7月に古紙100%PPC用紙の品質設計を確立し、三島工場で生産を開始。現在の古紙100%PPC用紙の生産能力は、同社PPC用紙全生産能力の約30%に相当する。
今回の加工設備新設は、今後さらに需要の増加が見込まれる古紙100%PPC用紙の生産体制強化に加え、需要が減少している新聞用紙の減産に対応するもので、今後三島工場においても需要動向にあわせて新聞用紙の減産、および需要伸長が期待できる他品種への転換を図っていく計画。

(詳細は 紙パルプ技術タイムス 09年1月号 で)

大王製紙/バイオマスガス化設備が稼働
大王製紙が可児工場(岐阜県可児市)に14億円を投じて建設を進めていたバイオマスガス化設備が完成し、昨年11月より本格稼動を開始した。
新設したバイオマスガス化設備は、建築廃材・林地残材などの木屑を主燃料にバイオマス原料を100t/d使用するアップドラフト式ガス化炉で、これまで困難だった製紙用石灰焼成炉におけるバイオマスエネルギーへの燃料転換を実用化する国内初の設備。設備はJFE環境ソリューションズおよびJFEエンジニアリングが担当した。
バイオマスガスを石灰焼成炉で重油と混焼することによって重油使用量を半減するとともに、CO2排出量も2万1,500t/年削減できる。 可児工場ではすでに蒸気製造用設備のオイルレス化を図っており、パルプ薬品工程(焼成石灰炉)や製紙工程(熱風炉)における化石燃料削減への取組みにより、工場の完全オイルレス化を目指している。

(詳細は 紙パルプ技術タイムス 09年1月号 で)

三菱製紙/独子会社の増資を実施
三菱製紙は昨年11月、ドイツの連結子会社であるMitsubishi Paper Holding(Europe)GmbH(略称MPH)の増資を行った。
増資金額は3,500万ユーロ(約42億円)で、これによりMPHの資本準備金は4,847万3,000ユーロに引き上げられた。目的は「連結財務諸表作成における在外子会社の会計処理に関する当面の取扱い」の適用にともなうドイツ事業における国際財務報告基準採用による利益余剰金の減少、およぴこれまでの収益悪化によって減少した自己資本の充実で、主に借入金返済に充当される。
現在、ドイツ事業を取り巻く環境はEU域内での競争激化、天然ガスをはじめとする原燃料費の高止まり、為替動向にともなう域外輸出採算の低下などによってきわめて厳しい状況下にあり、三菱製紙では今後、生産設備の統廃合、要員合理化、コスト削減、営業改革など抜本的な機構改革を行い、採算性向上を図っていく考え。

(詳細は 紙パルプ技術タイムス 09年1月号 で)

紀州製紙/配合率管理システムを監査
紀州製紙は古紙配合率乖離問題の再発防止策として、自社製品について日本製紙連合会が定めた「古紙パルプ等配合率検証制度」に基づき、2008年月までに全社的な古紙パルプ配合率管理システムを導入したが、このほど審査登録機関であるSGSジャパンによる監査を受け、古紙パルプ配合率の管理および顧客への証明書発行に関わるシステムの構築・運用が確認された。
監査内容は以下の通りで、下記基準への適合内容を本社・工場で確認、関連文書および記録の確認、担当者からの聞き取りなどを実施し検証した。
(1) 古紙および古紙パルプ配合率の定義
(2) 古紙パルプ配合率管理に関わる手順(製品生産計画および古紙材料調達計画の策定、古紙材料の受払および在庫管理、製造時の古紙パルプ配合率の管理および内部モニタリング、対象製品の仕上げ、在庫管理および出荷)
同社では今後も定期的な内部監査、外部監査を受けることで、古紙パルプ配合率管理システムの厳格な運用を継続していくとしている。

(詳細は 紙パルプ技術タイムス 09年2月号 で)

レンゴー/桂工場跡地を譲渡
レンゴーは、このほど桂工場跡地(京都府京都市南区吉祥院観音堂町。1万1,062.51m2)の譲渡を決定。譲渡価格は14億円(帳簿価額5,000万円)で、2009年3月末までに譲渡を完了する。
同社は昨年12月26日に譲渡契約を締結しており、譲渡先については公表していないが人的・資本的な関係は一切ないという。桂工場は印刷紙器部門の強化を目的として、2008年4月に生産設備を新京都事業所(京都府長岡京市)へ移設・統合され、桂工場は閉鎖した。
なお、今回の固定資産譲渡にともない、平成21年3月期連結決算および単体決算で固定資産売却益約10億円を特別利益として計上する予定。

(詳細は 紙パルプ技術タイムス 09年2月号 で)

レンゴー/子会社が紙器機械事業から撤退
レンゴーの100%子会社であるハマダ印刷機械は、2月1日をもって紙器機械事業(紙器機械の製造販売・メンテナンス)から撤退する。
なお、同事業については伊藤忠商事、北國銀行などを主な株主とする石川製作所(石川県白山市。資本金45億3,400万円)が引き継ぐことになっている。

(詳細は 紙パルプ技術タイムス 09年2月号 で)

日本製紙グループ本社/アントシアニン茶品種育成に参画
日本製紙グループ本社は、農研機構 生物系特定産業技術研究支援センターによる「イノベーション創出基礎的研究推進事業(発展型)」である「抗疲労作用のある新規高アントシアニン茶品種育成と利用食品開発」プロジェクトに参加する。
同プロジェクトでは新たな高アントシアニン茶の育成・栽培試験を実施するとともに、茶葉に含まれる機能性成分の基礎研究、応用研究を行い、今までにない新しいお茶の提供を目指して産学官が連携しながら今後3年間(平成20−22年度)にわたって研究を進めていく。ちなみにアントシアニンは植物に含まれる紫色の色素でポリフェノールの一種。ブドウ、ブルーベリーなどに多く含まれ、目の疲れを癒すなど目の健康を維持する働きが大きいとされるほか、強い抗酸化作用により老化防止などの作用があると言われる。
高齢化が進むなか、健全な食生活による健康寿命の延伸や生活習慣病リスクの高い人を対象とした高機能性食品に対する期待が高まっており、食品成分の機能性解明や機能性食品開発が大きな課題となっている。このため野菜茶業研究所が育成中の新規高アントシアニン茶系統を用い、機能性成分の単離・同定、疲労・ストレスのバイオマーカーの解明、機能性成分の共存効果解明、機能性成分と代謝成分の安全性評価や適正摂取量の設定、作用メカニズムの解明、動物およびヒトでの臨床評価、さらには短期成園化技術を確立しつつ新規抗疲労・ストレス性高アントシアニン茶系統の栽培特性・茶葉特性の解明と品種登録申請、飲食品への応用を図る食品素材化技術の開発を行うことで、抗疲労・ストレス効果を有する食品素材の開発を目指す。
プロジェクトには農業・食品産業技術総合研究機構野菜茶業研究所、日本製紙グループ本社のほか、九州大学、京都大学、アサヒビールが参画。日本製紙グループは独自に開発した「光独立栄養培養技術」を用いて、苗の生産が難しい新規高アントシアニン茶品種の短期大量生産技術の開発を担当する。

(詳細は 紙パルプ技術タイムス 09年2月号 で)

エコプロダクツ2008/“CO2マイナス50%”を掲げ過去最大規模で開催
日本最大級の環境展示会「エコプロダクツ2008」(主催;(社)産業環境管理協会、日本経済新聞社)が2008年12月11〜13日の3日間、東京・有明の東京ビッグサイトで開催された。
同展は1999年より毎年開催され、第10回目となる今回は「もうできる!CO2マイナス50% エコライフ」をテーマに、出展者数758社・団体1,796小間、来場者数17万3,917人と過去最大規模での開催となった。
以下、紙パルプおよび繊維・不織布関連に焦点をあてて出展内容を紹介する。
○王子製紙グループ;「古紙60%、初心100%!」をテーマに、現在製紙原料の6割を占め、ますますその重要性が増す「古紙」に焦点を当てた展示を行った。ブースでは大量の新聞古紙パルプを床面に敷き詰め、来場者はその上を歩き回ったり実際に手で触れることのできるユニークな体験型展示を展開。パネルでの展示や資料などはあえて用意せず、来場者の質問にはブースに立つ同社社員が直接答えていた。
○日本製紙グループ;「紙は資源循環型素材」をテーマに、紙の原料である「森林資源」、製品となった後の「紙」、さらに紙づくりに必要な「エネルギー」のそれぞれの循環について、これまで同社グループが継続して取り組んできた活動を紹介した。森林の循環から生まれた植林技術やアグリ事業、また古紙リサイクルの取組み、さらにエネルギーの循環ではパルプの製造工程で発生するバイオマス燃料の活用や重油からバイオマス燃料ボイラーへの切替えなどをパネルで解説した。
○三菱製紙グループ;「森をまもりながら紙をつくる!描こう!未来へつなぐエコスタイル」をテーマに、FSC森林認証紙をはじめとする三菱製紙グループのさまざまな環境への取組みを紹介。ブースではFSCロゴマークを子どもから大人まで幅広く認知してもらおうと、ロゴマークの入ったポストカードを配布して来場者にアピールした。
リンテック 「エコ技術ドキュメンタリー“夢をつなぐひと”―ラベルやシートで明日を変える―」をテーマに、同社が企業広告として展開する「Linking your dreams 夢をつなぐひと」のエコロジー編をコンセプトに出展。製品に携わる研究員や営業担当者がナビゲーターとしてブースに立ち、同社の「エコ技術」を親しみやすく、わかりやすく紹介した。パネル展示では独自設計による特殊コーティングタイプの太陽電池用バックシート“リプレア(R)”や、高透明断熱フィルム“ヒートカット(R)”などを紹介した。
○レンゴー;段ボールについて楽しく学べる「段ボールおもしろ教室」をテーマに、子どもはもちろん大人も興味深く学習できる展示を行った。ブースでは、使用済み段ボール箱が新しい段ボール原紙に生まれ変わり再び新たな段ボール箱となるまでを、実物も交えてわかりやすく解説したほか、さまざまな機能を有する環境配慮型段ボール製品の紹介も行った。さらに、太陽光発電システムやバイオマス焼却発電などの積極的な導入によるCO2排出量の大幅削減や、カーボンフットプリントへの取組みなどもアピールした。
山陽製紙 廃棄物である梅の種を備長炭の窯で炭化させ、パルプ・炭・水のみで製造した地球に優しい100%リサイクル紙“梅炭クレープ紙”と利用製品を展示・紹介した。また、同社と学生協、(株)秀英、巽製函(株)の4社および大学生とのコラボレーションによるリサイクル運動として、大学生が中心となって集めた学内の弁当容器を回収して原料とし、完成したクレープ紙を商品化して大学生協で販売するという取組みも紹介した。
○金星製紙 石油からPET繊維をつくった場合と比較して、約47%のCO2排出量の削減効果のある回収PETボトル繊維を使用した、環境にやさしい水切りゴミ袋“エコボンリック”を中心に展示・紹介を行った。同製品は、三角コーナー用、排水口用とそれぞれ目の粗さを変えることで家庭排水の細かいゴミをキャッチして、河川や海の環境負荷低減に貢献する。
紙パルプ関連ではこのほか、山田兄弟製紙(河川環境に優れたヨシを原料としたヨシ紙の展示・紹介)、古紙再生促進センター、森林認証PEFC、段ボールリサイクル協議会、紙製容器包装リサイクル推進協議会などもブース出展を行った。
旭化成グループ 「昨日まで世界になかったものを。」をテーマに、同社グループの環境対応製品・技術・サービスを「廃棄物削減・省資源化」「地球温暖化防止」「水質保全」の3コーナーに分類して紹介したほか、同社グループのCSR推進、RC、環境への取組みもアピールした。
○クラレグループ;「未来に化けるECO素材」をテーマに、同社の水処理関連事業を中心とした展示を行った。そのほか、製造工程中に有機溶剤を使用しない環境対応型・新規人工皮革“ティレニーナ”、熱可塑性エラストマー“セプトン”なども紹介した。
帝人グループ 「持続可能な社会に貢献する帝人グループの技術」と題し、循環型リサイクルシステムから再生されたポリエステル繊維“エコペットプラス(R)”製タイヤコードが使用されたEco Car対応タイヤ“PROXES(R) Ne”の展示など、とくに自動車のCO2削減に貢献するさまざまな技術を中心に紹介を行ったほか、同社グループが注力する水処理技術、装置の展示も行った。
○東 レ;同社グループの環境関連活動の総称である“エコドリーム”をテーマに出展し、日常生活の「自然のなかで」「街のなかで」「家のなかで」「オフィスのなかで」を取り上げ、それぞれのシーン別にRO膜(逆浸透膜)“ロメンブラ”やPLA樹脂/フィルム、太陽電池パネル用“ルミラー”など、さまざまな場所に使用されている同社製品をわかりやすく紹介した。
○ユニチカグループ;「想う、つくる、変える。素材からはじまるエコ。真に豊かな暮らしと環境創造へ。」をテーマに、植物のでんぷんからつくられるポリ乳酸を原料としたバイオマス素材“テラマック”を中心とする展示を行った。テラマックはフィルムやシートをはじめ、繊維、樹脂などさまざまな形で利用されており、不織布用途では農園芸資材、土木資材関連を中心に展開している。
○ユニ・チャーム;同社のベビー用紙おむつ“ムーニーマン スリムパンツ”のCO2排出量を算出し、紙おむつにおけるCO2の「見える化」の事例を紹介したほか、08年6〜7月に期間限定発売し、約3,400tのCO2削減効果をあげたカーボンオフセット付きムーニーマン スリムパンツにおける活動内容や結果について報告した。また、製品価値の向上と環境負荷低減の両立を実現した環境対応型商品にのみ表示できる、同社のエコラベル「エコチャーミング」マークの初めての表示商品であるムーニーマン スリムパンツと生理用品“ソフィ シンクロフィット”の紹介も行った。

(詳細は 紙パルプ技術タイムス 09年2月号 で)

機能紙研究会/「産業連携と機能紙」をテーマに新技術を紹介
特定非営利活動法人・機能紙研究会は11月20日、名古屋市千種区の今池ガスビル・ガスホールにおいて「産業連携と機能紙」をテーマに第47回研究発表・講演会を開催、約250名が参加した。当日は稲垣寛会長の挨拶のあと、概要以下のような講演が行われた。
○イオン交換を利用した錯体触媒担持シートの開発(愛媛県産業技術研究所紙産業技術センター・特別研究員 深堀秀史氏、森川政昭氏、二宮順一郎氏);高い選択反応性をもち環境負荷軽減が期待されるルテニウムなどの金属錯体触媒を低コストで実用化できる担持シートの試作を行った。ケイ酸塩繊維(ガラス繊維)サスペンションに塩化ルテニウム水溶液を加えて攪拌し、触媒を繊維上に担持。さらにパルプ繊維を加え脱水・抄紙して触媒担持シートを作成。これにアルコールからアルデヒドへの選択的酸化反応を行ったところ、反応にともなう触媒の溶出はなく固体状触媒として取扱い可能で、かつ市販の固定化ルテニウム触媒に匹敵する触媒性能が確認された。
○芯鞘高性能導電繊維“コアブリッド(R)B”(三菱レイヨン(株)中央技術研究所繊維開発研究室副主任研究員 山本洋氏);“コアブリッド(R)B”は、アクリル繊維の湿式紡糸法の特徴を活かして開発された導電繊維。原料ポリマーが溶媒と水から分離され繊維が形成されるとき紡糸原液に添加した導電性粒子(カーボンブラック)が濃縮される作用を利用、比抵抗100〜102Ω・cmと練り込み型導電繊維では高い導電性能をもつ。導電性ポリマーがアクリルポリマーで被覆された構造であるため、摩擦や屈曲で導電性粒子が脱落しにくく高い耐久性を備える。元来ステープル素材であり、ショートカットファイバーにも加工が容易で、紙や不織布向け制電材料、電磁波吸収体用などに用途展開が進んでいる。
○バイオマスプラスチック・ポリ乳酸の採用例と技術動向(ユニチカ(株)テラマック事業開発部部長 白井宏政氏);ポリ乳酸(PLA)はバイオマス由来の、サスティナブル(循環可能)な素材である。同社ではポリ乳酸樹脂製品を“テラマック”の商標でフィルム、樹脂、不織布、繊維の4つの形で展開。従来、PLAは工業用途で使用するには結晶化速度が遅く、成形工程に時間を要するうえ耐熱性で著しく劣るのが問題であった。同社では独自のナノレベルでの高分子配合設計と結晶化制御技術により結晶化速度を通常の約100倍、200℃から130℃では約1分で結晶化するポリ乳酸組成物を開発。また耐久性の向上では加水分解を抑制するため、残留モノマーやアルカリ化合物などの抑制で50℃で95%の相対湿度環境保存後の曲げ強度が1,000時間後でも90%以上の保持率を示すポリ乳酸を得ている。耐熱性・耐久性の改良で携帯電話筐体やコピー機ドラムカバーなどの電気用途、電子レンジで加熱可能な容器など新たな用途展開が可能。
○熱可塑性セルロース繊維“フォレッセ”について)東レ(株)繊維研究所主任研究員 荒西義高氏);セルロース系ポリマーを、有機溶媒を用いる必要のない溶融紡糸法で繊維化できれば、原料のみならず製造面でも環境に優しいセルロース系繊維が得られる。同社では各種の検討を行い、ある程度嵩高い脂肪族エステル側鎖の導入によってセルロースの熱可塑性を格段に向上させうることを見出した。その結果、溶融紡糸で繊維化できる“フォレッセ”では、繊維の断面設計が容易で均一な断面のマルチフィラメントが得られる。海島複合紡糸を行った場合、セルロース系繊維でありながら単糸繊度が0.1dtex以下で直径が2μm程度の超極細繊維を製造できる。また中空口金により、見かけ比重が1以下となる超軽量繊維も得られる。
○特別講演/木材の細胞間層の流動性発現と大変形3次元成形加工((独)産業技術総合研究所・サステナブルマテリアル研究部門主幹研究員 金山公三氏);木質系材料の有効利用を促進する「大変形3次元成形加工」に取り組む。細胞間にせん断滑りを生じさせ、その利用によって大変形を可能とする。そのために検討したのは水や各種溶剤の利用と温度の適切な制御、応力状態を適切にするための金型や負荷方式の工夫であり、今回その概要を紹介した。
○特別講演/環境にやさしい自動車の技術開発動向(トヨタ自動車(株)常務役員 鈴木茂樹氏);自動車が今後も交通手段として発展するためには、環境負荷最小化が重要で「排出ガスのクリーン化」「CO2削減に向けた燃費向上」「エネルギー多様化」が主要課題。「排出ガスのクリーン化」ではとくに触媒の果たす役割が大きい。「CO2削減に向けた燃費向上」は車両軽量化や伝達効率の向上が有効で、CFRPなどの軽量高強度な材料の普及が期待される。伝達効率の向上にはAT摩擦材の改良などが必要。「エネルギー多様化」では石油代替技術の開発が急務で、とくにバイオ燃料は自動車用として期待され食料・飼料と競合しないエタノールの製造技術開発が進められている。電気は水力や原子力など各種1次エネルギーから得られるため、エネルギーセキュリティ上も望ましい。同社では家庭用電源からも充電可能なプラグインハイブリッド車を開発し実用性を確認中で、6月には電池研究部を新設。また水素は将来のクリーン燃料の本命と位置づけられている。
○わが社におけるLCAへの取組みについて(阿波製紙(株)研究開発部 津田幸輔氏);環境の保護・改善について企業に求められる役割は年々増大しており、LCAもその一つとして注目されている。同社でのLCA導入のきっかけは顧客からLCAデータを要求されたことである。同時期に経産省の支援で「製品グリーンパフォーマンス高度化事業」参加のオファーがあり、その一環として産業環境管理協会(JEMAI)より08年1〜3月の間にLCA導入のコンサルティングを受け、自動車エンジン用濾紙など自社製品のLCA評価を受けた。
○セルラーゼの話題(三重大学大学院・生物資源学研究科資源循環学専攻准教授 苅田修一氏);セルロース質を微生物などを利用し糖化して糖質としてエネルギーなどに利用しようとする考え方が、近年再び注目されてきた。セルロースを分解できる微生物は微生物全体からすると少なく、主に土壌微生物と消化管微生物であり、真核生物である糸状菌と原核生物である細菌とに分けられる。これらの微生物の遺伝子解析やゲノム解析により、セルラーゼについていろいろな情報が得られてきている。微生物は想像以上に数多くの加水分解酵素をもっており、セルラーゼだけでなく多くの糖分加水分解酵素を駆使して植物細胞壁を分解していることがわかった。また、嫌気性細菌や嫌気性糸状菌はセルラーゼ複合体「セルロソーム」により効率的に分解を行っている。
○酢酸セルロース限外濾過膜の水処理への利用(ダイセン・メンブレン・システムズ(株)技術開発センターセンター長 中塚修志氏);酢酸セルロース膜は親水性に加え高い非対象性の膜構造を有するため、逆洗などによる膜洗浄効果が非常に高く、高い濾過性能を長期維持できる。同社の膜は中空糸型限外濾過膜であり、公称分画分子数が15万(孔径0.01μm)、内径0.8mm、外径1.3mmで原水を中空糸の内側に流す内圧式である。酢酸セルロース膜は表面のゼータ電位が大きく負であるため膜面への微粒子の付着(ファウリング)が起きにくい。浄水処理への適用として、すでに10年以上の実績がある。同社の膜は150ヵ所以上の導入実績があり、日量1万m3以上の大規模設備にも導入されている。
○粘土を主成分とするシート“クレースト”((独)産案技術総合研究所・コンパクト化学プロセス研究センター材料プロセッシングチーム長 姥名武雄氏);従来フィラーとして少量使われてきた粘土を、添加物ではなく主材料とした膜にすると飛躍的に耐熱性およびガスバリア性が向上するのではとの逆転の発想に基づき、粘土からなるシート材の開発を行った。“クレースト”の主成分は天然あるいは合成の層状シリケート(粘土)。添加物は要求性能に応じて選択されるが、その割合は耐熱性保持のため30重量%までとする。制膜はキャスト法などの従来の製膜方法を利用でき、ロール状長尺物が可能。クレーストはヘリウム、水素、窒素、酸素、空気ガスに対し高いガスバリア性を示す。合成粘土を用いた粘土膜の全光線透過率は90%以上で、350℃までの高温で透明性を維持することが確認されている。粘土膜フィルムの応用技術として、フレキシブルプリント基板、色素増感太陽電池、有機EL素子などが検討されている。CFRPと積層した複合材料はガスバリア性に優れ、水素タンクなどに応用可能である。既存の非アスベスト製より優秀なガスケットも開発した。07年1月に製品の上市に至り7月には大阪に専用工場を竣工して本格生産を開始した。
○全熱交換型換気扇ロスナイの歩みと工場省エネについて(三菱電機(株)中津川製作所 杉山陽一氏);送風機を活用した省エネおよび事例2点の紹介。まず換気による居室の生活環境改善と、空調における省エネを両立させるのが、給気と排気の間で熱交換を行う省エネ型換気扇“ロスナイ”である。この全熱交換素子には厚さ25μmの特殊加工紙を使用している。また天井が高く大空間の工場内では温度ムラが生じやすく、余分な空調でエネルギーロスを生じる。これに対し“気流”を生成できる「エア搬送ファン」により、間仕切りおよびサーキュレーション効果によって、室内環境改善と省エネが可能となる。

(詳細は 紙パルプ技術タイムス 09年2月号 で)


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