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紙・板紙需給1~6月期/コロナ禍の影響大きいグラフィック系


 日本製紙連合会の集計による、今年1~6月期の国内紙・板紙需給実績がまとまった。製紙連は毎年初にその年の内需見通しを発表しているが、2020年については緩やかな景気回復の持続や消費増税後の反動減からの立ち直り、さらにオリンピック・パラリンピック・イヤーであることなども勘案し、紙で前年比△3.2%、板紙で同+0.1%、合計で同△1.7%と試算した。

 これを用途別にみると、グラフィック系が△4.3%、パッケージング系が±0.0%、そして衛生用紙が+0.8%となる。つまり総じて、前年までの流れが継続すると考えられていた。しかし国内の景況に関するこの予測は、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大によって根底から覆された。緊急事態宣言の発出、世界経済の悪化に伴う輸出の減少などにより国内景気は急速に悪化している。

 すなわち1~3月期の実質GDPは、前期比△0.6%(前期比年率△2.2%)と2四半期連続でマイナス成長となった。さらに4~6月期は外出の自粛、休業要請など新型コロナウイルス感染拡大の影響が色濃く反映されることから、実質GDPは同△6%前後の減少と3四半期連続のマイナス成長が見込まれており、前期比年率ベースでは△20%程度と、過去最大だった2009年1~3月期(△17.8%)を上回る落ち込みが予想される。

 こうした経済情勢下での国内紙・板紙需給に目を向けると、1~6月期の生産は前年同期比△10.1%の1,150.1万t、出荷は△8.8%の1,141.0万tと、生産・出荷ともに3年連続の減少となった。国内出荷は△10.2%だが、四半期別にみると、1~3月期の△6.3%に対し4~6月期は△14.2%と急落し、特にグラフィック用紙は△25.0%と大幅に落ち込んでいる。

 在庫は19年後半より前年を上回って推移し、5月には過去最多を記録した。一方、日銀の企業物価指数にみる価格動向は、原燃料費や物流コストの高騰などを背景に、2018年末~19年前半に実現した価格修正が浸透・維持されたことから、衛生用紙を除き変動はなかった。

 足元では、緊急事態宣言が全面解除となり、新型コロナウイルスの感染拡大防止と社会経済活動の両立を目指す政府の基本的対処方針に沿って、6月下旬には全国の移動が解禁された。経済活動再開の動きが徐々に広がってきているが、一方で感染再拡大の懸念が強まりつつあり、新しい生活様式のもと景気回復のテンポは緩慢なものにとどまると考えざるを得ない。

 国内の製紙各社は急激な需要構造の変化に対応すべく、生産体制の再構築などにより効率化を図るとともに、成長が期待される段ボールを中心とするパッケージングや衛生用紙分野への事業転換、CNFなど新たな収益源構築に向けた取組み、使い捨てプラスチックの代替となり得る新製品・既存製品による脱プラ⇒紙化を加速することが急務となっている。

(以下、用途別解説はFUTURE2020年8月17日号で)

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