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中越パルプ工業/CNF量産化設備稼働に向け新事業部を新設


 中越パルプ工業は6月に予定しているセルロースナノファイバー(CNF)量産化設備の稼働に向け、CNFおよびCNF加工品の生産・販売を担う組織として、1月27日付で開発本部の下にナノフォレスト事業部を新設し、同事業部内にナノフォレスト製造課を置いた。
 「ナノフォレスト」(nanoforest)は、極微小なサイズを意味する「ナノ」と、天然 の森林を意味する「フォレスト」を組み合わせたも。中越パルプはかねて筑波大学デザイン領域の研究生たちと交流があり、彼らとブレーンストーミングを重ねるなかで、この言葉が生まれたという。すでに登録商標化されており、同社製のCNFには今後このネーミングが使われる。現在ロゴマークなども制作中で、まもなくお目見えの予定という。
 地球上のあらゆる生物にとって不可欠な水と酸素を生み出す天然の森林は、ナノレベルの合成工場と言えるが、同社は植物の造り出したCNFを水の力だけを利用して取り出しており、この点が製法上の大きな特長となる。名は体を表すというが、薬品などを加えず、できるだけ優しく天然の繊維を傷めないように工夫された同社製CNFにはまさにnanoforestの呼称がふさわしい。
 ナノフォレスト事業部は高岡本社(富山県高岡市)の開発部の中に設置されたが、今年6月の完成を目指している第一期商業プラントは川内工場(鹿児島県薩摩川内市)で建設が進む。高岡ではなく川内を選んだのは「原料となるパルプについて針葉樹や広葉樹にとどまらず、とくに他社にはない特徴として国産竹の選択も可能」(同社)になるからだ。
 商業プラントの投資額は約12億円だが、今後も市場の拡大に応じて順次、設備増強を図っていく。同社のCNF(ナノフォレスト)は、九州大学の近藤哲男教授が発明した「水中対向衝突(ACC:Aqueous Counter Collisin)法」をベースに、パルプと水のみから製造した環境配慮型の商品。高吸着性・高強度・透明性・寸法安定性・低線熱膨張などの機能に加え、他のCNF製法では見られない両親媒性の特徴を備えている。
 両親媒性とは、親水性と疎水性という真逆の性質を併せもつこと。これにより例えば、水と親和性の高い濾紙にナノフォレストの分散水を塗ると水を弾くようになり、逆に水を弾くポリエチレンシートに塗ると弾かなくなる。
 現在さまざまな方面で用途開発が進んでいるが、中でも有力なものの一つが未修飾のナノフォレストを用いた複合樹脂で、今年秋の製品化を目指している。中パは2015年1月、出光コンポジット㈱および㈱三陽商会とともに、ナノフォレスト(NF)をポリポリプロピレン(PP)に高分散させたNF複合樹脂の開発に成功している。表面に化学修飾を施していないことから、コスト的にも優位な製品として期待されており、*剛性強度向上*強度向上*表面硬度向上*収縮・寸法安定性の改善*接着性向上―といった特性の発揮が期待されている。
 210℃の射出テストで得たNF複合化PPの成型品には、フローマークや焼けなどの外観不良はなく、流動性は一般のPPとほぼ同じで、ナノセルロースの再凝集も観察されない。さらに表面の荒れもなく、優れた表面光沢を有している。この成型サンブルは、指で押しただけで違いが分かるほどの弾性強度を有しているという。
 またスピーカー分野では、振動板の素材開発から業務用・民生用の完成品まで幅広く手がける世界的なオーディオメーカー、ONKYOがNF配合の車載用スピーカーや自社ブランド製品などで商品展開を計画している。電気信号を空気の振動に変えるスピーカーの振動板には、高忠実度再生のために軽量性と高剛性という相反する性質が求められるが、ナノフォレストをパルプに混抄することで音質の向上を実現しているという。
 開発・生産から営業展開、対外PRまで幅広い領域を担当する同社のナノフォレスト事業部だが、当面は商業プラントのスムーズな立ち上がりに注力するとしている。

(Future 2017年3月6日号)

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